6年前手術に成功
91歳の歩み進める母

設計 松平博行
 私の母(91歳)が6年前、緊急入院した。腸内のバリュームによる重みで破裂。純水1トンの量で体内を洗浄した。以後、直腸障害「ストマ」(人工肛門)です。
 真夜中、手術の成功を執刀医が告げた。家族みんなホッとする。入院が30分遅れたら駄目なケースでした。この都立病院に来るまで地域の医者から次の病院と転送されて3度目だから、時間の無駄が惜しくてなりません。
 入院から4週間くらい経った日に執刀医と面会した時「高齢者は手術が成功しても、多くは寝たきりになるケースがほとんど」と言い、そして母の日常生活を聞かれた。母は14階建、413世帯の建物の周囲と隣接するバス停のある歩道の清掃を月20日以上、約10数年にわたり、おこなっていたことをはなしました。医師は「それらの活動と生まれ持った身体で大手術に耐えられた。あなたのお母さんは歩けるし、リハビリに頑張ればかなり良くなるでしょう」と言う。
 後日、弟妹が来た時に医師との話をしました。母は若いときから苦労のし通しだったこと。人には暖かく接したことで、神様よりごほうびをもらったのかもしれないと話しあった。私が子供の頃は、庭掃除を早くすまし遊びに行こうとしたら「お隣の庭に面した道も掃除しなさい」としかられた。また「人に何かをしても、見返りを求める気持ちを持たないように」とさとされたことを思い出す。
 母の誕生日は05年12月25日。91歳の誕生日を祝いましたが、オモチャの人形のように歩を進める母を、日々介護をしている私としても「良し」としてみています。
(江東)