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急逝した夫の後をおって
造園業だった夫と二人三脚で仕事に精出した私たちは、そのチームワークの成果として、15年前に千葉の九十九里浜に別荘らしき家を持ちました。 「50代になったら、私の好きな文学に没頭できる人生を過ごしたい」という私の夢を夫が果たしてくれました。 九十九里ののどかな土地で、執筆にいそしみ、人生の集大成として書き上げた「自分史」を村の図書館に寄贈しました。そうすると「私も書きたい」という希望者が現れ、地域の方々に「文章教室」のようなものを指導したことがあります。 そんな日々の朝、家事を済ませて、一服する時に決まって永六輔さんの「遠くへ行きたい」が流れ、「チビちゃん」と呼んで飼っていた尾長鳥が『愛する人に巡り合いたい』というフレーズになると声を出して歌っていました。 巡りあう愛を小鳥もわかるのだろうかと愛の素晴らしさと歌の郷愁に感動したものです。 その地で小鳥、ウサギ、犬、猫と飼いましたが、誠実を持って接すると人間と同じくらいの愛の触れ合いができました。 愛、すなわち憧れこそが生命の糧だと思った文学三昧の充実した日々でした。 しかし、夫が突然病に襲われ、懐かしい別荘と文学三昧の日々は闘病の甲斐もなく逝ってしまった夫の病気療養のために手放してしまいました。また、歌っていた尾長鳥も夫の後を追うように亡くなりました。 今は当時を思い出すあの歌を時々口ずさみながら、亡き夫の供養をする毎日です。 一人になり、次に来る自分自身の最後はどのように結ぼうかと生きている毎日が貴重で大切な日々です。 (杉並)
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