度肝を抜く落雷
両親を失った友だち

浜崎時子
 私が小学5年の夏、にわかに雨が降り出し、雷の音が近づくのを聞き、海水浴に行った兄と妹に傘を持って行こうと思い、畑道を歩いていました。目の前の松林の上に、ドーンという音と同時に、ピカッと大きな光の玉が現れました。
 光の玉は楕円形で、色はよくわかりませんが、あえて言えば光色でしょうか。銀色の稲妻は見たことがありますが、これは珍しい現象なのか、未だに謎です。度肝を抜かれてひき返すと、別の方向から帰ってきたびしょ濡れの兄に、「傘はいらないよ」と言われ、ちょっとがっかりしました。
 雨がやんで静かになった頃、村の人たちが「近所のおばさんが農作業中、雷に打たれて死んだ」と騒いでいます。
 その家へ行ってみると、おばさんの娘で私より2つ年下の里子ちゃんが、草をちぎりながら泣きじゃくっていました。
 雷で人が死ぬって本当なんだと子供心にも震え上がりました。その日から、私は「雷恐怖症」になってしまいました。
 それから数ヶ月後、里子ちゃんに呼ばれて家へ行くと、
里子ちゃんのお父さんは足をケガして、腫れていてウーウーと唸り声をあげ、苦しんでいました。「どうしよう」と言われたけれど、お父さんが怖くて「わからない」と答えて帰って来てしまいました。翌日、お父さんは亡くなりました。
 立て続けに、里子ちゃんの両親が亡くなり、大阪で働いていた18歳くらいのお兄さんが帰って来て、彼女の面倒を見る事になりました。
 あの時、私が誰か大人に知らせていれば、もしかすると助かったという思いと、里子ちゃんがお腹が空いていると言っていたのに、私は何もしてあげなくて、本当に可哀想な事をしてしまったと大人になるにつれ、思うようになりました。
(中野)