第2213号 2017年6月20日号
グラン・ブルー/リュック・ベッソン監督
まだエアコンが普及していなかった40年近く前の夏、暑さに耐えきれず、家を抜け出して母校(中学)のプールに忍び込んだことがあった。バシャバシャと音を立てると通行人に見つかるので、ずっと潜って泳いでいた。誰もいない真夜中のプールの中は真っ暗でひっそりと静まり返り、厳かで深遠な感じがして、ひとかきするたびに海から来た祖先とつながったような気になったものだ。
実在の天才ダイバー、ジャック・マイヨールをモデルにリュック・ベッソン監督が描いた『グラン・ブルー』。日本では『グレート・ブルー』として1988年8月に公開されたが興行が振るわず、すぐに打ち切り。その後、フランスで「グラン・ブルー・ジェネレーション」と呼ばれる若者達による盛り上がりが話題となり、翌年4月のビデオ発売をきっかけに日本でも人気が過熱していく。
ギリシャの島で幼少期を過ごした2人の少年、ジャックとエンゾが、23年ぶりにシチリア島で開催されるフリーダイビングの大会で再会。ロザンナ・アークエット演じるジョアンナとの出会いも巻き込みながら、音も重力もない深海での人間の限界を超えた対決が始まる…というストーリー。主人公ジャックを演じたジャン=マルク・バールより、エンゾ役のジャン・レノの方が有名になった。アメリカ公開版では、音楽だけでなく作品の結末まで変えられたというから驚きだ。
エアコンが一般的になった現在だが、温暖化により以前にも増して真夏の夜の暑さは厳しくなっている。そんな寝苦しい夜に涼をとるには、お薦めの作品です。
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