第2193号 2016年12月1日
運命を分けたザイル/ケヴィン・マクドナルド監督
イギリス人ジョーは山頂で次の言葉を思い浮かべていた。「登頂の喜びは薄い。なぜなら事故の80%は下山中に起こる」。
1985年にペルーのアンデス山脈、標高6600mのシウラ・グランデ峰に難関である西壁ルートからアタックしたジョーとサイモンによる実話を再現したものです。
この映画は1991年世界中で大ベストセラーを記録し「死のクレバスアンデス氷壁の遭難」を映画化したものです。
登山映画などでは、特にエベレストなど登頂の記録などがあります。たいていは現地の山岳ガイドを雇いロバなども引き連れたパーテイーでキャンプ地を転てんとしながら、頃合いを見計らい最後のキャンプ地から一気にアタックするのを見たことが事あり、これが一般的な方法だと思っていました。しかし、なんと彼らはベースキャンプを持たずに登頂する方法をとりました。それをアルパイン・スタイルというそうです。
なぜ、そんな無謀な方法を選んだのか映画を観始めてすぐ理解できました。
ほぼ垂直な斜面がいきなり立ちはだかる。雲の上の頂上は登っても登っても見えてこない。中継キャンプ地に適した場所など一切ない山だったからです。
道具や食料など最小限、最低限ですから、一か八かでトライするわけです。無謀とも思える2人は、いくつもの「想定外の危機」を互いの信頼と強い野心、精神力でもって乗り越え登頂に成功します。2人は眼下の景色をぐるりと見まわし成功を讃えあいます。その時間はわずかでした。足元に目をやり顔を上げた瞬間、80%の危機に歩みだすのです。
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