2017年6月1日第2211号
HOUSERS(ハウザーズ)―住宅問題と向き合う人々―/中島明子著
住宅を地域という「面」で考える
【本部・書記・松舘寛記】建設業に働く私たちは「強い住宅」など技術に強い関心がありますが、「適切な住まいに住む権利」(住まいは人権)という命題に接近できていないことも事実です。
『HOUSERS(ハウザーズ)―住宅問題と向き合う人々―』が出版されました。編著者は和洋女子大学で居住学の中島明子教授、墨田支部のNPO法人すみださわやかネットの理事長も務められています。
本書は住宅とは何かという根源、現在の住宅事情の実相と解決方法が柱となっています。(1)住まいを考える視点、(2)家族と住まいのビジョンを探る、(3)居住貧困をなくすために、(4)専門職はどうかかわるか、(5)住宅セーフティーネット論を超えて、の5章について21人の専門家が書いています。
4章では建築カレッジ講師の山本厚生先生が「自由を育む家族と住まいづくり」、すみださわやかネット事務局長鈴木和幸書記が「下町の防災まちづくり」の項目で活動経験に基づいた示唆に富む論文があります。
東京土建は居住地組織の技能集団として「地域」で組合を育んできました。本書は、住宅を点だけでなく地域という面で考える視点で貫かれています。墨田支部は長年、鈴木浩先生(福島大学名誉教授)や中島先生に指導や助言をうけて地域建設産業振興計画・運動に取り組み、成果としてすみださわやかネットを設立し、運動を続けています。
この本は中島先生の退官記念論文集とともに墨田支部の運動経過の本ともいえます。(萌文社・2160円税込)
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