1)新たに実施する「木造住宅耐震診断事務所登録制度」の内容
東京都都市整備局は、12月21日付で「木造住宅耐震診断事務所登録制度」の設立と同制度に基づく「耐震診断技術者講習会及び考査」を2月4日(日)に実施するとホームページ上で発表しました。この制度は、建築士事務所登録をしている建築士事務所に所属する建築士(一級・二級・木造)を対象に講習会と修了考査を実施し、考査に合格した「耐震診断技術者」が所属する建築士事務所を「耐震診断事務所」として登録し「都民に情報提供する」というものです。
2)この間実施してきた都住協「耐震講習会」との矛盾点
この制度を所管する市街地建築部建築企画課(旧都市計画局)では、過去に耐震診断講習会を毎年実施してきましたが、2003年を最後に中止したこともあり、その後は都住協(東京都地域住宅生産者協議会)主催で現在の耐震講習会を開催してきました。その内容も一般診断から精密診断、耐震補強工事の施工方法の説明会(3月開催)にレベルアップさせるとともに、講習会修了者リストの自治体窓口設置と活用を求めてきました。そうした一方で(1)建築士事務所登録及び所属建築士のみを対象とし、(2)都住協主催の耐震講習会と同じテキストを使用、(3)さらに57,000円もの費用徴収で事務所登録をおこない、(4)都民に情報提供するという今回の制度実施は、所管が異なるとはいえ、同じ都市整備局内での整合性もつかないこと、(5)また、耐震診断業務マニュアルを完備している=耐震診断を業務としている建築士事務所がわずか一週間(2月15日から22日)の間に登録をするという極めて"周到に準備された"制度実施であると言わざるを得ません。
3)都連の要請と今後の対応
こうした矛盾点を踏まえて1月10日、東京都連(都内15建設労働組合16万人で構成)として制度内容や今後の対応について要請しました。都の担当者は、今回の事務所登録制度は、年度当初から開始が決まっていたとし、この制度が「都民から寄せられる耐震診断・改修工事等への苦情やトラブル対策」に重点を置いたものであること、さらに都民が信頼できる"モデルとなるような耐震診断事務所"を登録・紹介していくと説明しました。また、今回の登録制度を東京都防災・建築まちづくりセンター(東京都の外郭団体)に委託(指定講習機関に認定)したことにより、登録料が57,000円となったこと、担当者としても 「想定していた費用よりも高いと思っている」と回答しました。
現在、建築士事務所協会に委託(丸投げ)されている都内自治体の耐震診断助成制度は対応もままならず、補強工事にまで至らないケースが相次いでいます。墨田区のように行政、建設業協会、建築士事務所協会、地元建設労働組合、町会・自治会などで協議会をつくり「地域ぐるみ・まちぐるみ」で住宅の耐震化促進をはかる先進的な例があるなかで、今、行政が果たす役割は、助成制度の拡充・活用促進と地域諸団体のコーディネートです。
しかしながら、今回の要請の際にも都の担当者は、「本来は行政がおこなうものではないと思っている。民間主導でやるべきだ」と発言しています。都民の生命と財産を守る自治体の役割を見失い、「丸投げ」と「責任逃れ」の制度発足は、「地元の仕事に責任をもち」、「安全・安心なまちづくり」をめざす私たちのとりくみと方向性が全く異なるものであり、到底納得できるものではありません。いずれにしても都住協主催の「耐震講習会」との整合性を踏まえながら、仲間の混乱を招かぬように対応するとともに、今後の状況によっては都議会への要請等も検討していきます。
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