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○ 政治危機と私たちの選択

山口二郎法政大学教授

 安倍強権政治に反対する市民と野党の共闘が全国で進んでいます。昭島市では3月31日、昭島市公民館で、「戦争立法許さない!総がかり昭島市民の会」が主催し、共闘団体の結成をめざした講演会を開催しました。当日の山口二郎法政大学教授(「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」呼びかけ人)の講演「政治危機と私たちの選択」から一部を紹介します。(文責・編集部)

権力の暴走と開き直り
教育勅語問題の本質をみる

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山口二郎法政大学教授

 政治の危機というのは権力の暴走と為政者が責任を問われないという問題です。明示的に禁止されていないことは何をやってもよいという権力側の開き直りがすごい。さらには権力の集中が著しく進んでいる。戦後70年、私たちがともかく守ってきた民主主義、あるいは自由、平等、個人の尊厳という基本的な価値が今本当に脅かされている。
 教育勅語の問題というのはそこに本質があります。教育勅語の本質は何かといえば、夫婦仲良くという話ではない。天皇があらゆる道徳の源泉である。臣民というものは天皇のために喜んで身を捨てて戦いなさいと命令している。そこに教育勅語の本質があるわけです。

戦後的な価値の転覆すすむ

 その本質と国民主権、あるいは憲法で規定している民主政治の原理と絶対に相容れない。そういうものを学校の教材として使えますというようなことを文科省が言い出す、本当にめちゃくちゃな危機です。まさに安倍政権が進めている戦後的な価値を転覆する動きは着々と進んでいる。
 森友学園の事件だって土地の値引きの問題が明るみに出ていなかったら、今頃右翼的な教育勅語を礼賛する小学校が開校していたところです。
 それから政治の危機というのは言葉の崩壊という形をとって現われるわけです。

支配者が言葉をコントロール

 これはイギリスのジョージ・オーウェルという小説家が「1984年」という小説の中で書いた話です。全体主義国家において権力者は言葉をコントロールする。言葉の意味を自分の都合のいいように作り変える。支配者は人民に3つのスローガンを刷り込みます。(1)戦争は平和である、(2)自由は隷属である、(3)無知は力である。これは矛盾している、おかしいではないかと思われるでしょうが、戦争は平和であるという矛盾した命題を毎日、人民に刷り込んで行って、おかしいぞと思わなくする、矛盾をそのまま受け入れるようにするというところに全体主義のポイントがあるわけです。

詭弁、ごまかしで言葉が崩壊

 これはまさに今の日本でも起こっている話です。南スーダンの現状は戦闘ではなくて衝突である。衝突といったものだから戦闘を物語る資料を隠すということをするわけです。あるいは自由は隷属である、共謀罪もそうです。みんなが安全に生きていくためには共謀罪なるものをつくって、人々が警察に従属するような社会をつくることが必要であるというわけです。
 働き方改革、女性が輝くというので、さらに人々に長時間労働を強いていく。こういう詭弁、ごまかしがどんどん折り重なっているというのが安倍政治の現状です。言葉が崩壊してしまっている。これは本当に深刻な問題です。

人事権が乱用される
公的機関でどんどん浸透

 権力の過剰で一つ言えるのは、あらゆる公的機関で安倍的なるものがどんどん浸透しているという問題です。
 とくにそれは人事において現れています。集団的自衛権の問題をみても、それが実現した背後には安倍政権による人事権の乱用があります。内閣法制局という役所は従来憲法9条の解釈として集団的自衛権は行使できないという見解をずっと維持して来たわけです。歴代の自民党政権の総理大臣もそのような法制局の見解を尊重してきました。

チェック働かない議院内閣制

 ところが安倍首相は法制局の見解が自分のやりたい集団的自衛権行使の邪魔になるというので法制局の人事に手を付けました。長官に自分のお気に入りを送り込む。とりわけ従来、専門性、中立性が尊重されてきた公的な機関、さらに一般の行政官庁の幹部職員についても人事権を振るい総理の支配権がいよいよ巨大になっていく。
 権力の分立が機能しないと言いましたが、現状は政権交代のない議院内閣制というある種の独裁政治です。大統領制というのは徹底した三権分立でして、裁判所も遠慮なしに大統領の権力行使にチェックを働かせます。議会も大統領の政策、人事に対して抵抗することがしばしばある。
 ところが議院内閣制では国会で多数をとった勢力が首相を送り出し、首相が行政権力を握る。国会の多数派、自民・公明の与党は立法権と行政権の両方を手中に収めています。だから立法と行政のチェック&バランスはそもそもあまり期待できない。

絵に描いた餅の国政調査権

 森友問題での国政調査権の発動、参考人、証人を呼ぶという話にしても一貫して与党は消極的でした。つまり憲法で、国会で国政調査権をきちんと規定していても、多数派である与党が拒否すれば行使できない。調査権は絵に描いた餅になる。野党がいくら調査権使おうといっても、少数派ですから、野党の意思が国会の意思にはならない。
 官僚機構の既得権をいかに守るかということにみんな必死になっている面がある。だから原発差し止め訴訟でも沖縄の辺野古の埋め立てをめぐる沖縄県と国の間の争いにしても裁判所というのは何か国側の主張をコピーして貼ったような判決を書くのです。
 議院内閣制といえば本来的に国会の多数派、あるいは内閣に権力を集中しやすい性格をもっていますが、とりわけ今のように政権交代の可能性が全く見えない、この政権が当分続くとみんなが思う、そういう状態だと、選ばれた独裁者が本当に出現をする。
 ですから歯止めとなるのは選挙における国民の意思表示と権力者を首にすることしかありません。次の総選挙は本当に大事だとよくよく理解していただきたい。

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