竹信三恵子和光大教授が批判
雇用破壊招く働き方改革は許せない
ジャーナリストで和光大学教授の竹信三恵子さんが1月21日、全印総連東京地連の春闘討論集会で講演しました。安倍政権が進める「働き方改革」について、「改憲のための毛ばりだ」と指摘しました。
毛ばりは魚釣りで使う針の付いた疑似餌。非正規労働者の正規化などを宣伝していることを「詐欺的手法」と批判しつつ、労働組合にはそうした政策の本質を見極めて対応してほしいと訴えました。
安倍政権は2015年に正社員転換・待遇改善実現本部を設置し、その後、5カ年計画も制定しました。非正規のための施策に力を入れているように見えますが、竹信教授は「実際にやっていることは全く逆」と述べました。
正社員への道を閉ざし「生涯派遣」を押し付ける労働者派遣法の改悪や、低賃金になりかねない限定正社員の提起、そして基本給の待遇差別を温存する「同一労働同一賃金」のガイドライン案などを挙げました。
ガイドライン案では、正社員と同水準の賃金を得るためには「能力」「業績・成果」が正社員と同等であることが条件とされています。竹信教授は「こういう要素は客観的な指標とはいえず、会社の恣意(しい)的な判断が入る。女性たちがずっと『能力がない』と差別されてきたのと同じやり方だ」と批判しました。
通勤手当などは正社員と同等になるとしても、退職金や企業年金、家族手当、住宅手当が是正対象に盛り込まれていないことを問題視。「労働契約法20条を根拠に闘っているメトロレディー(東京メトロ構内の売店で働く女性労働者)たちの差別是正裁判では、退職金や住宅手当を求めている。そこをあえて外しており、裁判に悪影響を与えかねない」と懸念しました。
長時間労働是正の一つとして検討されている勤務間インターバル(休息)規制についても危険性があるといいます。「インターバルの時間を例えば11時間に設定すると、8時間労働規制が不十分な日本では、むしろ逆に13時間労働がまかり通ることになりかねない」と警鐘を鳴らしました。実施するなら「(8時間労働が基本になるよう)16時間のインターバルにすべき」と述べています。
「高度プロフェッショナル制度」の名の下に提起されている労働時間規制外し(残業代ゼロ制度)については、対象職種や年収要件は国会審議が不要な省令で自由に変更できる点を挙げ、「年収300万円の正社員を対象にすることさえ不可能ではない」としました。
安倍政権がこうした政策を打ち出したのは、経済政策「アベノミクス」の失敗をごまかす目的のほか、憲法改悪に向けて多くの労働者の賛同を得ようとしているためだと指摘。メディアがアベノミクスの失敗を正面から取り上げないようになっている中で、労働組合の役割は大きいと強調しています。
憲法の観点で政策を点検し、身近なところから勉強会や情報交換をしていく取り組みを提案。政府の宣伝に乗らず、本質を見極める力量をつけてほしいと訴えました。