上乗せ労災が必須に
高額な損害賠償の時代
私のお客様の会社で2年半前に労災事故がありました。その会社は金属加工業で、作業員の女性がプレス機に指を挟んでしまいました。
会社は、労災保険の手続きを適正に行い、病院の治療費、休業補償も労災保険から支給されました。
結果的に、その方の指には若干の後遺障害が残り、労災保険の障害等級12級(下から3番目)と認定され、障害補償も会社はすべて適切に労災の手続きを踏んでいました。しかし、この女性は退職後、「労災事故は会社の安全指導、安全管理が不十分であったことが原因であるので、980万円の損害賠償を払え」と訴えを起こしました。結局、約1年の裁判を経て、500万円で和解という結論に至りました。会社は、きちんと安全教育を行い、研修や技術指導も行っており、女性の注意不足による過失が主因であると主張しましたが、裁判所の考え方としては、「会社が努力をしていたことは理解しているが、結果的に怪我してしまっていますからねえ」という考え方でした。
理不尽に思える部分も多かったですが、これが裁判での考え方ということです。
さて、ここで大事なのは、労災が起きた際、労災保険を適切に使って対応しても損害賠償請求されることはありうるということです。車に例えるなら、労災保険は自賠責保険でしかなく、それだけでは大きな事故の責任は補償しきれないという現実です。
近年、労災関係の裁判が急増しています。建設業も労災事故は多い業種です。
少し前まではあまり意識はされていませんでしたが、会社であれ、個人であれ、人を使う立場にある場合、車の任意保険にあたるような民間の労災関係の保険にも加入が必須の時代になったんだと痛感させられた事例でした。
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