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○ 安倍君好みの改憲に喝

八法亭みややっこさん(弁護士 飯田美弥子さん)

落語で憲法語り全国行脚

 私が勤めている八王子合同法律事務所、その名にちなんで八法亭みややっこと申します。平日は弁護士業務をこなし、週末は落語で憲法噺(ばなし)。今日は山形、お次は福岡と全国を飛び回り、3年半で約150回の高座をつとめてまいりました。

落研スキルを生かす

 なぜそんなことをしているのかって。それは、安倍君らがつくった改憲案が実現した社会では、弁護士なんてやってられないからです。世の中の仕組みはもうめちゃくちゃ、日本社会はバカ殿の天下になってしまいます。
 直接のきっかけは、講演依頼でした。主催はある女性団体。何を話せばいいかと尋ねたら、「憲法は私たちの暮らしにどう生きているのですか」って。私、思わず椅子からずり落ちそうになりました。
 私の前には高名な弁護士さんが憲法について密度の濃い話をしたばかりだったからです。それで「いい話を聞いたね」と感激して帰っても、自分の周りに憲法を見つけられず、「私には関係なさそうね」で終わっているのではないか。同じような講演では二の舞だと思い、高校時代の落研(おちけん)で培ったスキルを生かそうと考えたのでした。
 高校3年生の文化祭では人情噺の「芝浜」をやり、聴いていた人が涙を拭う!という腕前の私。

知られていない13条

 で、始めてみたのはいいけれど、最初の頃は「すべったらどうしよう」と、夜も眠れない。これって弁護士として話すのとは別のメンタリティーですよね。
 高座では、身近なことや歴史の話を織り交ぜて憲法の価値を語っています。
 例えば、「左翼」ってなぜそう呼ぶか知っていますか。フランス革命後の議会では、議長からみて右から聖職者、貴族、第三身分(庶民)の順に席が決まっていた。つまり左端が貧乏人代表。これが左翼の始まりです。プロ野球の選手会長がレフトの選手だったからじゃないですよ。もし、そうだったら、元ヤクルト・スワローズの古田敦也さんが選手会長のときは、労働組合は「ほしゅ」になるところでした――というネタで笑いを取ったりして。
 これまで話をしてきて皆さん、憲法13条の存在をよくご存知ないことを発見しました。「個人の尊重」を定めた部分ですね。私は9条(戦争放棄)や25条(生存権)より、この13条が憲法の核心だと確信しております。憲法は私に「好きなように生きなさい。生きていいんだよ」と言ってくれている。何を幸せと感じるかは人それぞれでいいんだよ、ということ。生き方や幸福の価値観を他人や国に強要されるべきじゃない。

個人としての尊重こそ大切

 小学校1年生から反抗期に入り、「ちょっと変わった子」だった私を受け入れてくれた大事な憲法です。その13条に安倍君は手をつけようとしています。自民党改憲草案(2012年)は「個人として尊重」を「人として」に書き換えています。個性を持ったかけがえのない個人を、「人」一般に格下げしている。小さな変更のようで、実は大変な改悪です。
 そうなれば、「人たるもの、日本国民たるものはこうあるべき」という押し付けが始まります。安倍君好みの国民をつくろうとしています。国のために国民があるという、こんな改憲案を通さないため、まだまだ週末は頑張ります。ああ、早く改憲を断念させて楽になりたい……。

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