書記長 白滝誠
安定して働ける賃金を
高卒3年以内で50%が離職
白滝誠書記長
日頃より組合活動への参加と協力をいただいていることに改めて感謝申し上げます。新年にあたり2017年がどういう状況下で、東京土建はどう立ち向かうのか、いくつかの課題について触れたいと思います。昨年7月の『週刊・東洋経済』には「ゼネコン、笑いが止まらない」という大きな特集が組まれて注目を集めました。それを裏付けるように11月に発表された大手・準大手25社の第2四半期決算では、22社の完成工事総利益(粗利)が前年同期実績を上回り、17社が粗利率10%を超えています。長谷工17.8%、鹿島16.0%、大成13.7%などと高水準を記録しています。要因は「労務費が落ち着き、工事採算性が改善した」とされています。要するに現場労働者の低賃金構造によって大企業が儲けたことが明確になりました。この間、公共工事の積算に関わる設計労務単価が連続して引き上がりました。一日2万6000円を超える職種がいくつもありますが、仲間の手元には渡っていません。豊洲新市場や五輪施設現場での組合の調査では、半数以上が日給1万5000円以下という結果でした。設計労務単価と1万円以上もかいりがあります。
2月14日に賃上げ集会
豊洲市場は主要3棟が大成、鹿島、清水の元請でしたが落札率は99%以上でした。ほぼ予定価格で請けても労務費が現場労働者に回ってこない。1万円超すかいり分がゼネコンの利益の原資ならば、こんな構造は許せません。
若い技能工が減少して離職率も高い、その原因は低賃金だと、ゼネコン団体の日建連も国土交通省も認めています。高卒後3年以内の建設業での離職率は約50%、製造業は27%。他産業の2倍も離職している現実を直視しなければ、建設産業の未来はありません。労働組合の賃金運動がますます重要になります。
2月14日に日比谷で賃上げ決起集会を開きます。1月は組合内で賃金の学習討論を広げて、怒りをもって賃上げ運動を盛り上げましょう。公共工事での賃金底上げには公契約法・条例の制定を急ぐことが求められます。新国立競技場が着工されました。全建総連は首都圏の各組合とともに「五輪施設建設対策チーム」をつくり、現場の宣伝・組織化、安全・契約・賃金などでの現場情報に基づく元請や発注者との交渉に取り組みます。
防災減災対策を地域にアピール
昨年5月被災地の熊本へ視察団を派遣
熊本地震では皆さんから多くの募金をいただき、現地組合などに送りました。ご協力に感謝申し上げます。
全建総連が木造での応急仮設住宅建設に取り組みました。東京土建からも労働者を送りだしていますが、プレハブよりも木造の良さ、温かみが注目されています。今後も災害は発生します。災害救援と復旧復興に建設労働の力は欠かせません。防災と減災に東京土建はチーム・ナマズ「まちの救助隊」活動を展開しています。
技術技能を活かしての社会貢献と地域へのアピールが、建設業振興政策や住宅改良への対応に噛み合ってきています。住宅相談と受注活動を発展させるリカコ(リフォームパートナー協議会)の発展も期待されています。技能向上・資格取得の要求は高まっています。入職支援や教育訓練の事業を前進させ、若く新しい仲間を建設産業に迎え定着させていくことも重要です。
アスベスト訴訟高裁勝利へ
不利益問題対策も強化
アスベスト訴訟の高裁判決へ正念場の年です。国と製造企業責任を再度高裁の場で明確にして、被害根絶・補償制度創設の課題も含め、法廷内外での闘いを強めます。
社会保険未加入対策は今年3月が一応の区切りです。様ざまな混乱をもたらしましたが、建設労働者の処遇改善と年金権の獲得は大切なことです。しかしまだ加入状況は不十分であり、法定福利費の支給や建設国保の認知不徹底の問題が山積しています。
3月でこの問題が終わりではありません。厚生年金を適用したが払いきれない下請業者の経営問題、一度は法定福利費の支給はあったがその後に単価が削られてしまうなどの不利益問題、町場の法人事業所の適用促進などなどに対応することが重要です。事業所への働きかけと相談体制は継続強化をはかります。建設キャリアアップシステムが夏ごろには稼働します。個個の労働者の資格取得や施工履歴が掌握され、処遇改善、雇用の透明化、建退共との連動が期待されます。ただ、ゼネコン主導で運用されてはなりません。全建総連が運用主体に関わっていますが、東京土建も登録事務などに参画し、労働者に役立つ制度に作り上げていくことになります。いずれにしろ建設産業の雇用契約関係において、大きな変化が生じることは間違いありません。労働者の権利拡充へ力を入れていきます。
相談体制確立が重要
幹部集団の団結守って
秋の予算要求集会に全国から3000人
組織建設の課題では、たいへん厳しい状況下での拡大運動へのご協力ご奮闘に心から感謝申し上げます。
社保未加入問題で事業所関係の大量加入があった半面、現場ではゼネコン等からの誤った指導のため、協会けんぽへの移行による大量脱退がありました。
改めて組合の結束、つながりの強化、相談体制確立の重要さが浮き彫りになっています。また組織拡大では月間目標達成の困難さを乗り越えて立ち向かう幹部集団の団結こそが、組合を強くすることが明確になってきました。
分会活動の確立、群の結集、日常的な顔が見える活動、生活密着の世話焼きや助け合い、若手の組合員や事業所の仲間の参加を一回りも二回りも広げることが大切です。
また、昨年の秋は多くの支部で技術技能をアピールして地域に打って出る大きなイベントを成功させてきました。
それと同時に新しい仲間の参加協力を広げています。拡大運動にも厚みと活力をもたらし、功を奏しています。
今年も活力ある組織増勢へ、引き続いてのご奮闘をお願いいたします。
政治の世界では強引な国会運営が問題となっています。
国民が望んでもいないことを拙速な審議で強行採決する手法は、議会制民主主義はもちろん国民主権の否定につながるものです。
戦争させない市民運動の共闘
安倍政権は暴走政治の極みです。その中身も武力行使の任務を持って南スーダンへの自衛隊出動、TPP批准、年金カット法、そしてカジノ解禁など、今までの国の姿かたちを大きく変えることばかりを推し進めています。
アベノミクスも壁につきあたり、大企業の内部留保は過去最高なのに、賃金は上がらず消費低迷が続いています。
今年は都議会議員選挙が6月にあります。少なくとも今年中の衆院解散総選挙の実施も間違いないでしょう。
野党と市民運動の共闘が前進しています。憲法を守ること、戦争をさせないこと、貧困をなくすことなどの一致点で、共闘の流れが太く強くなっていることは確実です。
6月都議選は国保守る試金石
都政では小池知事がどこまで本気で「都民ファースト」を貫けるのか、これまでの歴代知事が切り崩してきた福祉や保育、災害対策と住宅対策を取り戻すこと、そして国保組合への都費補助金を守り拡充できるのか、6月の都議会議員選挙はその試金石です。都民や私たちの願いが叶う政策の実現へ、働きかけを強め、広げていきます。
今年は東京土建結成70年ですが、産業別個人加盟の居住地組織という独特の組織形態を原則として、幾多の試練を乗り越えて今日まで大きく発展してきました。
未来への飛躍へと分会・群をさらに確立すること、若手の参加、活発な独自活動、親身な助け合い、仕事と賃金に役立つ東京土建を共につくりあげていきましょう。