地域循環型の経済優先
アスベスト問題は早期解決
【本部・唐澤一喜記】東日本大震災・熊本地震の復興事業、そして、首都圏への大規模震災が予測される中、建築物の倒壊によるアスベスト被害は重大問題です。また、オリンピック開催を進めるうえで発生する建築物の解体では、かつてない規模のアスベスト除去工事が行われます。
震災時・解体時の粉じん暴露対策の強化、国民へのアスベスト対策の啓蒙活動を求めます。
「建設アスベスト問題の早期解決と披害者の救済を求める請願書」は、最終的に「保留」となりましたが、全国から141万筆の署名が集まり、すべての会派から237人の紹介議員を得て、早期解決・補償基金制度の創設を「司法の場」から「政治の場」に持ち込むことができたのは重要な前進です。引き続き、建設アスベスト被害者と遺族が生活できる救済の実施とアスベスト被害の拡大を根絶する対策を直ちにとり、アスベスト問題の早期の解決を求めます。
暮せる賃金へ底上げが必要
【本部・木村潮人記】国土交通省、建設業界は、建設産業の担い手不足、世代交代の危機感から、建設労働者の賃金引上げと処遇改善への方針、施策を打ち出しました。
しかし、2012年度の設計労務単価に比べて16年度単価は34・7%上昇しても、私たちの賃金は3%程度の上昇にすぎません(都連組合員アンケート)。社会保険加入は2次下請以下の業者や労働者単位では道半ば、賃金引上げと社会保険加入の原資は私たちに行き渡っていません。
大手ゼネコンは、「労務費や資材費の上昇も一服している」(ゼネコン役員)との構えの下、2016年3月期決算では利益を大きく伸ばし、株主へ増配を行ないました。社会保険未加入対策では、一部に雇用を否定し、請負化、会社化(法人化)させる動きさえあります。
政策面で安倍政権は、「公契約法」に見向きもせず、地域別最低賃金は最高でも907円で暮らせる賃金ではありません。「全国一律最低賃金制で最低でも1000円、さらに1500円、そのために中小企業支援を」といった労働者、国民の声に応えていません。賃金・単価引上げと法定福利費の確保に向けて、「公契約法」制定、最低賃金制の抜本的見直しで建設労働者の賃金底上げが重要です。
また、建設労働者の賃金(人件費)を削減・抑制し、企業利益、株主利益を至上命題とする大手企業の経営姿勢を転換させるために、政治、経済の民主化、建設産業の民主化を求めます。私たちのこの要求を実現する政治をつくることが、今こそ大切です。
耐震助成制度を改善
地域業者・住民要望ふまえ
【本部・松広高幸記】熊本地震の被害は改めて安全安心のまちづくりの大切さを示しました。新建ハウジングの建設予定者へのアンケートでは、7割近くが「地震対策の変更を検討」というように、地震への備えや住宅の耐震化への関心が高まっています。
住まいの地震被害を最小限に食い止めるため、耐震助成制度を住民が利用しやすいようにしていく制度改善が必要です。2013年度の防災白書によると、学校や公共インフラの耐震化はなお一層の促進が必要とされています。
経済界は日建連に意見を聞き、国土交通省に官民連携強化の位置づけを高める申入れを行ないました。住宅改修支援策では施工に携わる地域建設事業者と住民の要望をふまえての拡充が必要です。
後継者育成の支援拡充する
国や地方公共団体などは、地元中小業者に自ら発注する工事の受注機会を増やすために努力する責任(官公需確保法)があります。そのため国は、その年の目標を定め目標達成のため、地元中小業者を対象にした契約方針を決めています。
地方自治体では、まちのバリアフリー化目標の設定や学校のトイレ洋式化など地元建設業者への発注を考慮した施策が図られていますが、発注工事金額の要件が高額のため、地元の専門工事業者の受注は厳しいものがあります。
多国籍化する大手ゼネコンに莫大の内部留保を保障する「アベノミクス」を改め、地域循環型の経済優先と地元中小業者が分離分割して受注できるしくみなど、国や自治体は改善、実施すべきです。
また建設技能技術者の育成はもっぱら中小零細経営が担ってきましたが、建設投資の急激な減少と競争の激化等により、若年後継者育成を取り巻く環境が悪化し、担い手不足が構造的課題として深刻になっています。
「建設労働者確保育成助成金」制度をさらに改善し、建設技能者を育成する認定職業訓練校等にたいする支援の拡充を求めます。
さらに新規入職者を雇用し職業訓練を受講させた事業主に対する雇用経費の補助や、建設関係の資格取得報奨金制度の導入、資格取得による賃金引上げ等の処遇改善をおこなう事業主への補助の創設・拡充が必要です。その際、建設業は他産業に比べて中小零細企業が多い実態をふまえ、利用しやすい制度にすべきです。
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