【清水】適用率開示せよ
下請まで全額支給いうなら
【共同デスク・山崎記者】「内部資料だ、ここで出す必要もないし、出す気もない」。これが法定福利費を下請まで全額支給するといち早く宣言した清水建設の「1次の100%適用はわかったが2次3次の、適用率を数字で示してくれ」という要求に対しての回答でした。
「今、皆さんの存在が非常にだいじで業界一体となって取り組みたい」と、国や日建連の方針をくり返し「待遇改善で入職者をふやしたい」と基本的な姿勢は示しつつも、事前の情報収集による「法定福利費を別枠支給しながら出精値引きで同額に」という1次からの指示メール、「建設国保はダメ」といった現場監督の話をつき付けると、「なかなか徹底できなくて」と元請の無責任な状態を認めざるを得ませんでした。
肝心な賃金の調査結果は、現場数やサンプル数、平均年齢まで、ほぼ前回と同様で、職種によっては数百円上がったとの内容に、「がっかりだ。どう評価するのか」という追及には「わずかというけれど下がっていない。昔に比べればよい」と、こちらはちゃんと払っているのに末端まで届いていないとでもいうような無責任な回答。
参加者からは、現場を特定しての「朝7時からの朝礼」、「オスとあいさつを強要される」、「整列し手を後ろで組まされる」、「トイレが遠い」などの告発と改善要求があり、賃金調査のプリント配布と改善等次回への要望を確認し、伊東団長(東京都連)以下33人、清水6人での交渉が終了しました。
【大和ハウス】前回と変わらず
処遇改善へ姿勢なし
【共同デスク・告坂記者】大和ハウス工業株式会社(以下、大和)との交渉には野老団長(千葉土建)をはじめ46人が参加。大和側は5人が対応しました。
組合側は設計労務単価の上昇分が現場労働者の賃金に十分に反映されていないことを示し、賃上げを強く要請。賃上げの施策について回答を求めました。しかし、大和は「賃金単価の引き下げは行なわず、適正価格で発注することで後押しをするが、労働者の待遇は直接雇用する事業主の問題」と、前回、前前回と変わらぬ返答。賃金調査においても、昨年春の交渉時に約束した「現場数」「最高額」「最低額」の報告がなく、平均額で回答する大和に対し「元請として現場労働者の実態把握に努め、全労働者の賃金に責任を持つよう」正確な賃金調査の実施を要求しました。次回調査で1、2次業者別の報告を約束させましたが、最高額および最低額の提示については「個人情報保護」などを理由に前向きな返答は得られませんでした。
また、具体的事例として、Dルームの現場で監督に建退共の質問をすると「しらない」といわれ、いまだに請求できない件に大和は「その場で説明できなかったことは申し訳ない」と謝罪、「当社の基準では6カ月以上取り引きがあり、100日以上従事し、今後2年以上の継続見込みのある従事者には貼付するよう指導している」と回答しました。
最後に4つの確認書と、賛同署名を取り交わしました。
【積水】いまだ含み発注
賃金の調査項目では前進も
【共同デスク・山田記者】積水ハウス(以下、積水)との交渉は、佐藤団長(東京都連)をはじめ42人の仲間が参加、積水側からは18人が対応しました。
まず、前回の交渉で課題だった下請業者の最低と最高額、平均値を調査した賃金調査データ(基礎・外装・内装)が、積水側から配布されました。最頻値なども調査されたことは前進といえます。
しかし、このデータは1次協力業者の調査結果であり、その3分の2がグループ会社の積和建設のものだったことから、労働者ベースで調査するよう要求すると「その予定はない」と回答しました。現場の実態を正確に把握するため、年2回の調査も要求すると「調査する会社が負担になる。年に1回とさせてもらいたい」と、こちらも後ろ向きな回答にとどまりました。
また、今回の調査結果について、どう思うか問いつめると「全建総連の機関紙も見ているが、その調査結果とそれほど変わらないと感じている」と回答。積水側は全建総連を十分に意識していることがうかがえました。
法定福利費の別枠支給については、組合側から「法定福利費分は上乗せして発注しているのか」と迫ると、「従来から働き方に関係なく法定福利費を含んで発注しており、内訳明示もしている」と回答し、内訳明示と別枠支給について、組合側との認識のズレも明らかになりました。別枠支給を引き続き検討するよう要求し、交渉は終了しました。
【鹿島】賃金調査を2回に
法定福利費別枠明示も徹底
【共同デスク・小松記者】年2回の賃金調査を求める交渉団に「調査は年1回で問題ないと思っている」としていた前回から一転、「今年度から2回、賃金調査を実施する」と回答。交渉団は「労働者の処遇改善、産業の発展を真剣に考えている表れだ」と、前進した鹿島建設(以下、鹿島)の姿勢を評価しました。
一方、賃上げが行き渡っていない実態や、日建連提言の年収平均530万円の実現に大きな開きがあることを指摘された鹿島は「道なかばといわざるを得ない」と、施策が不十分であることを認め、今後は全下請の法定福利費の別枠明示を1次に徹底し、それを再下請以下にも広げていく考えを示しました。
法定福利費について、「3次に請求したら、その分を工事原価から引かれた」という仲間の声に防止策として、昨年秋から清水建設や竹中工務店が、必要な法定福利費を全額支払うとした方針にふれ、鹿島でも実施するよう求めました。担当者は「現段階では会社方針なのでむずかしい」とした上で「今できることは、下請へは『見積段階で法定福利費を外に出して分かるようにすること』社員には『必要以上に値引きや工事費を減額しないように』と指導を徹底する」と回答。参加者から「期限まで1年しか残されてないことを理解しているのか」、「鹿島がやれば業界全体がやる」と全体を牽引する役割を果たすべきとの意見が出されました。
交渉には鈴木団長(千葉土建)をはじめ23人と鹿島からは9人が出席しました。
【大林】未加入分も払う
4つの方式で実態に応じ
【共同デスク・伊藤記者】交渉は東京都連の窪田団長を先頭に24人と大林組東京本店(以下大林)の12人で、賃金単価、社会保険未加入問題、法定福利費確保を中心に行ないました。
賃金はすべての職種で数百円アップの微増、埋まらぬ設計労務単価との約7000円の開きを大林は「設計労務単価は労働者の賃金の指標でない」と回答。「国は引き上げ分を賃金アップと処遇改善にあてるように要求している、1次へ単価を引き上げたといっても、現場に届いていないこことが最大の問題だ」と迫る組合に大林は、オペレーターや若手職長手当の創設など「できることから」賃上げに取り組むとの回答で双方の見解の相違が浮き彫りになりました。
社会保険未加入問題についてはグリーンサイトによる社会保険加入状況は下請企業1万8160社、労働者21万4449人のうち、1次の加入率90%、2次以下では60%と低く、このままでは間に合わぬとの追及に「この1年間を現場入場制限の猶予としている」と答えました。
法定福利費確保については、前回の交渉で議論が分かれているとした未加入分の支払いも、加入する旨の誓約書を出してもらえれば契約する、もちろん必要な法定福利費は全額を支払うと約束、具体的には①国交省や日建連の方式、②実施(事後)清算型、③合意金払い切り型、④常用型の4方式で実態に応じると、前回より踏み込んだ回答となりました。
【住林】1次を指導する
請求しても払わないと声上げ
【共同デスク・末松記者】住友林業(以下、住林)との交渉には、神奈川県連の石渡団長をはじめ45人の仲間が参加、住林側からは7人が対応しました。
はじめに賃金調査結果が住林から団長に渡され、説明がされました。
しかし、前年と比べ賃金単価の大きな変化は見られず、交渉団からは「実際は経費がこの金額からさらに引かれるため、受け取れる金額はもっと少ないという現場の声が上がっている」という意見が出ました。対して住林側は「坪単価での賃金は昨年より3万円程度上げたが、現場の職人の賃金に反映できていないのは非常に残念」と一定の努力はしたものの、結果には結びついていない現状を示しました。
また、法定福利費の請求について、2次下請の現場従事者より「1次下請に法定福利費を請求しても、支払ってもらえない。そのため、社会保険料を納める余裕がない。どうすればいいのか」と切実に住林側に問う場面がありました。企業側は「1次下請に対しては法定福利費を含めて支払っている。しかし2次以下に支払われていないのは下請同士で解決する問題である」と逃げの姿勢を見せましたが、最後には「法定福利費が行き渡るよう、1次下請に対して今後指導していく」という回答を得ました。
途中意見の違いから議論が平行線になる場面もありましたが、住林側も一定程度の歩み寄りが見受けられる交渉となりました。
【竹中】「全額払う」と明言
すべて別枠、労務費の15%
【共同デスク・村尾記者】竹中工務店との交渉は、組合側は神奈川県連の井上団長と企業従事者を中心に23人が参加。竹中工務店からは調達部企画管理グループ長ほか安全環境部安全グループ長など6人が対応しました。
交渉では、法定福利費について組合側から「社保加入、未加入にかかわらず法定福利費を全額支払うのか」との問いに「法定福利費は全額支払う」、「加入、未加入問わず、すでに入っている人の分も含めて別枠で支払う。労務費に対して15%支払うという方針」と回答を得ました。
健保適用除外関係では竹中の1次下請から2次の社長に「建設国保はダメ。協会けんぽに移れ」といわれている埼玉土建の仲間の現状を示して追及すると「特定されている現場なら直接指導する。そのような指導はやってはいけないと1次に指導し、その内容も組合に報告する」と回答し、下請指導を約束しました。
賃金調査については「サンプル数は1000人以上必要」、「日建連の目標達成のため年収額で調査が必要」との要求に「サンプルはふやす努力をしたい。年収調査は調整したい」と回答を得ました。
今回の交渉には、竹中工務店の2次下請で働く鉄筋工や設備工の仲間が複数参加し、現場実態を告発。鉄筋の単価下落によって廃業する仲間の実態や単価改善、週休2日に関する要求・発言が次次に出される交渉となりました。
【大成】賃金上がらず下落
元請責任ほっかむり
【共同デスク・浅野記者】大成建設との交渉は才田団長(埼玉土建)をはじめ30人、大成建設8人で行ないました。
賃金実態調査結果が、前回に比べ変化なし、もしくは下がっている実態に、交渉団は「他のゼネコンと比較しても現場の労働者の賃金が低い水準にある。1次への支払いはきちんとされているのか」と質問。そして「賃金が上がらない原因を調べて、現場労働者に適正な賃金がわたるように指導を強めてもらいたい」と賃上げを迫りました。
大成建設は「労働者の賃上げは必要、1次下請業者と適正な契約をしている」としながらも、2次以下の現場労働者まで指導はできないと従来の立場をくり返しました。
社会保険については1次下請は99%加入し、2次は70%以上が加入しているとする大成建設に、交渉団からは企業単位での加入は進んでいるが労働者の単位では未加入者が多い、労働者の単位で推進すべきと指摘しました。
加入の原資となる法定福利費ついては、別枠での請求を要請し、100%支払っているとする企業に対して、参加者からは実態として社会保険料分の経費がいまだにとれず、いつになったら支払われるのか、下請を指導してほしいと要望がされました。
現場で建設国保への不理解から、協会けんぽに入るようにいわれた事例を報告。文書での指導を要請しました。大成は、「Q&Aを配布した。建設国保の考え方は国交省と同じ。誤解のないよう、重ねて指導し、社内で徹底すると返答がされました。
労働者のための建退共の利率がUP
現場労働者のために国が作った建設業退職金共済(以下建退共)は、公共工事を請負った元請企業から働いた日数の証紙(1日310円)を貼ってもらい、証紙数に応じ、退職金を受け取ります。この間の企業交渉の成果で民間工事でも貼付する企業が増加するとともに普及へ説明会の開催や組合を通じた直接請求を認めるよう求めています。
その建退共が4月1日より運用利回りが2・7%から3%にアップ、最低でも掛けなければいけない月数も24カ月から12カ月に短縮されました。たとえば1カ月21日、10年分で掛け金約78万円で受け取り額は約94万円、20年では156万円に対し225万円にもなります。元請企業から貼付してもらうほかに、一人親方や個人も任意で加入できます。今なら手帳を持つと1万5500円分(310円×50日)の証紙がもらえます。まずは手帳をもち、証紙を請求しましょう。問合わせは所属の支部へ。
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