組合の力で協約賃金を
市場や国の政策任せにせず
4月8日、日本教育会館で第63回大手企業交渉の交渉団会議を開催しました。午前中に行なった浅見和彦専修大学教授による「建設産業情勢と大手企業交渉・賃金運動の課題」と題した講演の大要を以下に紹介します。
企業交渉(竹中工務店)で現場の実情を訴える仲間と交渉団(2015年4月)
2017年度に社会保険加入率100%めざすなか、東京では労働者単位で48%と低い。設計労務単価は4年連続で引きあがり、「市場賃金」から「政策賃金」に変化し2012年と比較して34.7%上昇し、国交省は民間の発注者にも警告をともなう指導を行なっています。
担い手3法(品確法・建設業法・入契法)が施行されましたが、全国建設業協会の調査では半数の企業で利益が悪くなっていると答えています。担い手3法は理念法なので、労働組合が取り組まない限り、賃金など自然によくなることはありません。
全鉄筋や建専連など専門工事業団体でも危機感をもち、労働組合も含めて賃金・社会保険の改善を取り組む(建専連)ことを強調し、日建連は「再生と進化に向けて―建設業の長期ビジョン」を発表し、「建設業が国民産業であることを国民各層に呼びかける」「業界団体・労働団体等に対し連帯と同調を呼びかける」としています。賃金運動を前進させる労働組合の役割は「市場賃金」や「政策賃金」に任せず、当事者として「協約賃金」を実現することです。
技能評価や職種別結集を
建設産業でめざす労働協約には4つ考えられます。(1)まず専門工事業団体との「技能評価協約」で技能労働者はどういう人か定め、最低賃金の設定を行ないます。(2)元請業者との「パートナーシップ協約」で技能評価協約を元請が尊重する責任を確認し、賃金・労働条件の確保や下請け業者との取引に関する元請の責任を明確にします。(3)技能評価協約と異なり、直接雇用される企業との「企業別の協約」で個々の労働者が実際に受け取る賃金を定めていきます。(4)現場における「現場協約」として、すでに専門工事業や元請業者と結ばれている労働協約の適用・遵守を現場で点検する手続き協約と現場段階で実質的な協約を結ぶ場合が考えられます。
大規模工事現場では労働協約を展望した現場委員会を確立させることが必要です。また労働市場は職種別にできており、職種別の結集により、専門工事業団体や地域段階での懇談の推進が求められます。
東京オリンピックの施設建設では現場委員会を組織して、専従者を配置する。現場レベルの他、中央、都の各レベルでの労働協約をめざします。賃金で元請との「パートナーシップ協約」が結べるのではないでしょうか。発注者との「覚書」の締結もめざします。ロンドン大会の経験から「大会施設工事安全衛生対策協議会」へ組合の参加を要求していくことが必要です。