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○ 確定申告の留意点と消費税問題

税金対策専従常任中執 渡邊睦
消費税対策は記帳から
負担ばかりの税率引き上げ

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大きく増税ノーの声を広げることが求められている

 2015年分の所得税申告の留意点は、第1に2013年1月からすべての白色申告を行なう不動産・農業・事業所得者に簡易な記帳義務が課されていることです。税務調査は、3年調査が一般的です。つまり、2016年5月以降に行なわれる税務調査は、2013年・2014年・2015年を対象として行なわれる危険性があり、簡易な記帳義務が課された2013年から対象になる可能性があります。
 第2にマイナンバー制度が今年1月1日から、「税務行政」で運用が開始されました。国税庁は、調査などでの運用をすすめるとしています。自主記帳をしっかりと行ない、組合の確定申告相談や記帳学習会で点検してもらうなどの対策が重要になります。
 第3に最近の税務調査との関係で、収入が800万円から1000万円未満の確定申告者が対象になっていることです。その理由は、収入が1000万円超の申告者が消費税の課税事業者になるからです。収入の漏れ、経費の算入間違いなどで1000万円を超え課税事業者になり、「消費税の無申告で課税処分を受けた」、という経験が多く寄せられています。

軽減税率導入負担軽減は嘘

 自民党と公明党の税制協議会は、2017年4月1日の消費税の税率を現行の8%から10%に引き上げる際に、軽減税率(複数税率)の導入を行なうことで合意しました。
 合意では、酒類や外食を除く食料品の税率を8%、それ以外のものを10%にするというものです。
IMAGE しかし、この合意は、軽減といいつつ現行の税率8%を維持し、結局、税率を10%に引き上げることを前提にしています。ある試算では、2人以上の勤労者世帯の負担増が年間で4万6000円もふえるとしています。この調査は、総務省の家計調査(2人以上の世帯)をもとに試算し、年間で負担する消費税額が25万8000円と約1カ月の収入にものぼり、負担率も3.7%から4.5%と0.8%も上昇するとしています。
 軽減税率を導入しても、低所得者対策などにはならないことは明らかです。そして、現在の日本の個人消費は、高齢者が約50%を占めています。高齢化が進む中で、この傾向はいっそう、強まると見られています。しかし、安倍政権は、年金の削減(マクロスライドの強化)や医療制度の改悪をすすめよとしており、消費税増税と年金削減、医療制度改悪などの負担増では日本経済の60%を支える国民総生産(GDP)を悪化させるだけです。
 軽減税率といういい方は正しくなく、複数税率の導入というべきです。
 建設産業には、一見、複数税率が存在していないようですが、従業員や取引先との飲食費が福利厚生費や交際費などで8%に該当し複数税率の処理をしなければなりせん。
 簡易課税制度を選択している仲間は、「みなし仕入れ率」の適用になるので実際の仕入れ税額より低い金額になり納付すべき消費税額が多くなる可能性があります。
 一般課税制度の仲間は、区分経理が必要になり申告期が今まで以上にはん雑な作業が必要になる可能性があります。


インボイス制度導入で 免税事業者は取り引き排除
組合の申告相談を利用しよう

 もう1つは、インボイス制度の導入による中小零細事業所や個人商店などの事務と経済的な負担の増大です。
 与党税制協議会は、2017年4月の導入当初、インボイスへの記載を税率ごとに分けずに消費税相当額総額を記載することや、複数税率の区分経理の軽減策として「みなし仕入れ率」の導入など批判をさけようとしています。
 しかし、与党協議会の案では、3年経過後の2021年にインボイス制度を本格的に導入しようとしています。事務の軽減は3年限り、おまけにインボイス制度の本格導入で消費税額を表示した適格請求書がすべての仕入れ控除対象取引に必須になります。
 小売店などの小規模事業では、レジスターなどのソフトの入れ替え費用も大きな負担になります。ただでさえ大規模量販店などにお客を奪われている町の商店は、存続の危機といえます。
 インボイス(適格請求書)は、消費税の課税事業者しか発行することができません。
 つまり、取引業者が免税事業者から仕入れても、消費税の課税仕入れにすることができない。仕入れをしているのに課税仕入れとして認められないから、納める消費税額がふえるということです。このことから、インボイス制度の導入が、免税事業者を取り引から排除する危険性があるといわれています。
 2017年4月1日から実施される予定の複数税率は、非常に複雑な制度で簡易課税制度のようなやり方がなじまないとされています。すでにテレビなどのマスコミは、複数税率導入の際に簡易課税制度を残すことを「益税の拡大」として報道しています。
 政府や財界、マスコミは、この益税問題などで消費者と業者を分断し、消費税の税率引き上げ反対の声を抑えこもうとすることは確実です。
 そして、2021年の見直しでは、簡易課税制度の廃止を含む見直しが行なわれる可能性があります。
 組合が行なう確定申告相談会は、複雑な税制へ仲間の支援、建設産業の実態を踏まえた節税対策などの実務と、税制をしってもらい、くらしにまで課税する現行税制への怒りと要求を集約し運動へと発展させ、自主計算・自主申告権を守る活動として取り組んできました。
 特に2016年の土建国保の就業実態調査は、税務署の収受印がある2015年分確定申告書控えの写しの提出が前提になっています。調査の対象になっている仲間は、組合の確定申告相談会に申し込みましょう。

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