「やらなくては」
全額支給に前向きな姿勢/鹿島
鹿島との交渉
【共同デスク・小松記者】「賃金調査は年1回で問題ないと思っている」年2回の調査の求めに、同じ回答をくり返す鹿島建設。交渉団は、日建連が「労働団体と連携・同調していく」という文言を初めて入れた『建設業の長期ビジョン』にふれ、「魅力ある業界にするため、企業と労働組合の壁を取り払って取り組むという立場に立ったのではなかったのか」「今日の交渉は、これまでと違うスタンスでのぞむべき」と企業側の姿勢をただしました。
清水建設が10月から、全下請へ法定福利費を全額支給することを決定したことについて鹿島は「当然しっているし会社のトップを含め関心をもっている」と回答。交渉団は「下請は、元請によって法定福利費支給の対応が異なると社会保険に継続しての加入が困難」と実情を説明。「少なくとも大手5社は清水にならい、早急に足並みをそろえてほしい」と要求しました。鹿島の担当者は「1社だけが実施しても効果が薄れる」と下請への理解を示し、具体策は今の段階でいえないとしながらも「鹿島もやらなくてはいけないのは当然」と前向きな姿勢を示しました。
9月に同社中部支店の支店長が業界紙の紙面で「賃金を5~10%引き上げ、技能労働者の処遇改善をはかる」と発言したことに、交渉団からは「全社的に取り組んでほしい」と要望しました。交渉には鈴木団長(千葉土建)をはじめ34人が出席しました。
全員に払うと明言
社保加入へ共同説明会を/清水
清水との交渉
【共同デスク・伊藤記者】清水建設(以下、清水)は、10月契約から(1)社会保険未加入分も含め必要な法定福利費(事業主負担分)を全額支払う、(2)法定福利費別枠計上を見積条件とすることを開始。交渉はこの点を中心にすすめました。
一部報道で「2次業者まで」となっていた支払いを「全員に支払う」ことを確認。周知については、すでに1次の約300社を集めて説明会を実施、社内周知も徹底し、不明点は問い合わせてもらえればていねいに説明すると回答しました。
組合は2016年4月から2次以下の社会保険未加入業者は現場に入れなくなることから、取り組みのスピードアップを強く要求、説明マニュアルの開示と2次以下の業者にむけた清水と組合との協同説明会の開催を提案、あわせていち早く取り組んだ社会保険未加入対策説明会などをつうじ、社会保険適用で現場の仲間たちを守ってきたと説明すると、清水は「すごい実績、敬服。めざすところは一緒」とのべました。
賃金を上げる具体策の追及に、請負契約で労務費相当分の金額は教えられないが、設計労務単価などの数字から現場の処遇改善を前提に設定していると回答しました。
組合は今回の清水の取り組みに実効性を持たせるためにも、法定福利費が現場の末端まで届いたか検証を要求するともに、協同説明会開催を再提案し、終了しました。参加は東京都連の伊東団長を中心に組合66人、清水からは6人でした。
清水と同様に払う
組合と歩調あわせて/竹中
竹中との交渉
【共同デスク・堀井記者】竹中工務店との交渉には、神奈川県連の井上団長をはじめ39人が参加。竹中からは5人が出席しました。
見積書で明示される法定福利費を全額支給せよとの交渉団の要求に対し、竹中は「法定福利費を内訳明示した見積書を提示してもらう取り組みを徹底していく」と回答。
その後、清水建設の取り組みと同様に、社会保険加入の有無にかかわらず必要な法定福利費を全額支払う方針であることを明らかにしました。竹中側からは「組合のほうでもボトムアップをしていただき、2017年4月に向け歩調を合わせていきたい」「この問題は業界全体が足なみをそろえていかないと続いていかない。全建総連とめざす方向は一緒だと考えている」などといった発言も出され、交渉団は、組合としても竹中では未加入分も全額支払われることを周知し、加入促進を進めていくと応えました。
竹中の現場に従事する仲間からも「技能継承のためにも、就労環境や賃金・社会保険の問題などしっかり取り組んでほしい」と要求が出され、竹中からは「継続して働いてもらえるよう、弊社が先陣を切って取り組んでいきたい」との回答がありました。
この間の交渉で組合側がくり返し要求してきた「元請負担による建退共証紙の貼付」に関して、竹中側は「今年7月の就労分から民間工事において50%を負担している」と回答。7月分からは請求がかなりふえていることを明らかにしました。
元請の責任はたせ
昼の休憩後に清掃命令も/大成
大成との交渉
【共同デスク・浅野記者】大成建設との交渉は才田団長(埼玉土建)をはじめ55人、会社側7人で行ないました。
賃金実態調査の報告からは前回調査にくらべ変化なし、もしくは下がっている実態に、参加者から「元請の指導力を発揮してもらいたい。死活問題だ」と賃上げを迫ると、大成建設は「労働者の賃金の引き上げは必要」としながらも2次以下の現場労働者まで指導はできないと従来の立場をくり返しました。
現場で建設国保に関する理解不足から、協会けんぽに加入するようにいわれた事例を報告し、建設国保と厚生年金のセットで従来どおり仕事が続けられるように徹底を要請、大成建設は「社内でもう一度確認してみたい」と返答。交渉団は国交省の通達を示し早急に会社全体の認識になるように重ねて要請しました。
現場従事者(外装)からは「最近の現場は躯体、外装、内装の職人が同時に作業をしているような状態で、雑然とした現場では労災事故が起こる可能性がある。また法定福利費を払うように指導しているといいますが、私のところにはきていません」と発言がありました。交渉団から適正工程の管理と法定福利費をはじめ適正な賃金について元請が下請に積極的に行なうように重ねて要望しました。
また「昼休憩後にいっせい清掃をいいわたされ、30分間ということもある、請負った工事以外の作業も含まれる」と指摘があり、交渉団は本業以外の時間は最小限にするよう要請しました。
賃金上がらず
建退共貼付は一定前進も/三井ホーム
>三井ホームとの交渉
【共同デスク・鈴木記者】三井ホームとの交渉は菅原良和団長(建設ユニオン)を先頭に36人の交渉団と会社側3人で行ないました。
大工、塗装、電気など7職種の賃金調査では、ほとんど上がっていないのが実態。半数の職種が前回と同様で残りは微増です。
たとえば大工は日額が平均1万7900円。組合側が一人前の大工がこの程度の賃金でいいのかと迫ると「この金額で1年通じて三井の仕事をやってくれているので満足してくれていると思う」や「三井の社員でも高い人もいれば、低い人もいて格差はある」などといい、現場労働者が低賃金で生活が苦しいことに思いを寄せる姿勢がまったく見られません。サンプル数も50人にも満たないもので賃金調査に対する三井ホームの本気度が問われます。
法定福利費は工事積算書で別枠明示すると回答がありましたが、組合側の追及に「明示はするが、単価がアップするとは限らない」と今までも法定福利費は込みで支払っていたという他の住宅企業と同様の頼りない回答でした。
前回交渉で建退共の証紙貼付推進を約束しました。東京の3エリアを対象に説明の場を11月に設けること、また2015年4~9月では1267枚の貼付があったと一定の前進もありました。しかし、貼付枚数の調査も継続的に行なう要望には「仕事がふえるので」と否定的な回答。全般的に労働者の待遇改善に消極的な回答でした。
いまだ別枠明示せず
追求に「今後はする流れ」/住林
住林との交渉
【共同デスク・山田記者】住友林業(以下、住林)との交渉には、石渡団長(神奈川県連)をはじめ56人の仲間が参加、住林側からは9人が対応しました。
まず要望書に対し「賃金調査結果は代表者に配布する。あとは口頭で回答する」と回答。配布できない理由の追及に「ネット上などに流出する懸念がある」と組合を信用していないような回答。他社は配布している旨を伝え、今後検討するよう要求しました。
法定福利費は前回同様、別枠明示されておらず「法定福利費込みの数字で業者と取り決めしている。別枠明示するのであれば、数字を表に出すだけでよいと考えている」と回答。
石渡団長が「金額のみ別枠明示するのでは意味がない。上乗せした数字で明示すべきだ」との追及に「上乗せするのが前提と考えている。すぐに別枠明示するとはいえないが今後、その流れになっていくと思う」と回答。
住林の現場従事者からは「現場入場システムが導入されたころから工期がきびしくなった。余裕がほしい。また繁忙期とそうでない時期があり、住林の仕事だけではやっていけなくなった」との意見に住林側は「人手不足による人員のやり取りは、直営・一般の工務店ともにある。繁忙期とそうでない時期がないようにしていきたい。工期については現場入場システムとは関係ない。無理な工期短縮があれば検討していく」と回答がありました。
改善むずかしい
現場実態ないがしろ/大和ハウス
【共同デスク・告坂記者】野老団長(千葉土建)をはじめ43人が参加。大和ハウス(以下、大和)側からは5人が対応しました。
建築部門で春の交渉時より賃金が下がったことを示し、現場労働者の賃金単価引き上げを強く要請。大和は「賃金改善はむずかしい」「労働時間や休日、夜間作業等の労働環境の改善を指導している、とくに日曜日は全現場で休工を推進しています」と回答。
技術労働者不足、設計労務単価上昇分が下請労働者に行き届いていない現状を認識しながらも具体策を示さぬ大和に「トップ企業として、すべての労働者の賃金に責任を持つよう」強く迫りました。しかし「適正価格で発注する」「賃金単価を切り下げないよう指導するが、労働者の賃金は直接雇用する事業主が考慮する問題」と春と同じ回答に留まりました。大和の定める適正価格を次回は明示するよう要請しました。
社会保険問題では「2017年を待たずに前倒しで未加入事業所を排除はしない」と明言。「標準見積書の提出は少ないが法定福利費を内訳明示した見積書の提出はあり、支払い拒否はしない」と回答を得ました。
また法定福利費が行き渡らない主因に「労働者の外注化」が懸念されることに対し、2次以下の業者まで法定福利費を含んだ標準見積書提出の指導を強く訴えました。
最後に4つの確認書を締結し、賛同署名の協力も約束しました。
未加入分支払い
議論が分かれている/大林
【共同デスク・小林記者】交渉には大林組東京本店(以下、大林)から建築・土木等11人が、組合側は窪田団長以下34人が出席しました。
元請発注額を鉄筋で55%引き上げたが、支払い賃金は半年前とほぼ同じ、各職とも1万6500円以下が多く、上げた分が賃上げにつながっていないことが判明しました。
大林は「1次にきくと労使の契約がいい加減、書面もない場合もある」。そこで、1次2次を集め支払うよう指導すべきと迫ると、賃金は労使が決めるべきと逃げます。日建連提言の530万円は道なかばだが、スーパー職長制度(239人)なら600万円も可能と一歩前進しました。
グリーンサイト登録の下請企業労働者約20万件のデータで、社保加入率は1次で3~4割、2次で2~3割だったと報告。
「法定福利費の削減はしない。標準見積書でなくとも受け取る」としていますが、この未加入者多数状況を変えるために、未加入分の支払いを迫ると「いかがなものか、未加入でも社保分をもらえるなら、入らないのではないか」に対し参加者から、「2次3次で、社保分をもらえなくとも、加入している業者がいる。先に出して下さい。加入していなければ払わない、上から目線はよくない」と反論し、重ねて要求しました。
大林内部ワーキングチームでは、未加入分の支払いは、議論が分かれていると内情の報告ありました。