国立プロジェクト参加者の有馬先生
国立市では2015年1月から「くにたち原爆体験伝承者育成プロジェクト」(以下、プロジェクト)を始めました。これは市内在住の被爆者で語り部の活動をする平田忠道さん、桂茂之さんから体験と平和への思い受け継ぎ、次世代に伝える原爆体験伝承者を育成するプロジェクトです。
プロジェクトに応募した市内の私立小学校の有馬佑介先生にお話をおききしました。
プロジェクトの一環で広島を訪れ被爆者の話をきく有馬先生(右から2人目)
─先生がこのプロジェクトに参加されたきっかけを教えてください。
有馬先生 私の勤務する学校はリベラルな校風で、平和教育に積極的に取り組んでいる先生もいます。市役所で被爆者の語り部の方をあっせんしているのを校長からきき昨年の暮れに6年生の社会科授業で、平田さんに被爆体験を話していただきました。生徒たちはふだん見せないような神妙なおももちで平田さんの話にきき入り、「戦争のことが、読んでしるより、リアルに感じられた」などと感想文にも書かれていました。
私はいつも生徒たちに「平和は作っていくもので、君たちにとっても私自身にとっても『他人ごと』ではなく自分の問題でもある」と話してきました。しかし、「いったい自分は何をやっているのだろう。平和に近づくことができているのか」という自問がありました。平田さんと市役所の方からプロジェクトのことをきき、応募することにしました。
─プロジェクトはどのような内容ですか。
有馬先生 毎月1回、2時間の研修です。約20人の受講者がいます。仕事をリタイアされた方、主婦の方、私のような現役世代とさまざまです。国立市外の方も半数以上います。研修会では2つのグループに分かれて、平田さんと桂さんを囲んでお話をうかがい、私たちが質問もするということをやってきました。私は平田さんのグループです。8月には広島に行き、平田さんの被爆された場所を訪ねたり、地元の被爆者の方のお話をうかがいました。
子どもたち同世代にも
─このプロジェクトの体験を今後どのようにいかしていくつもりですか。
有馬先生 私は教師ですので、勤務する学校以外でも子どもたちに話をしたいと思っていますし、原爆体験のない同世代(30代)の人たちにSNSなども活用して原爆体験を伝えていきたいと思っています。被爆は「記録」として残っていくのでしょうが、犠牲になった方方一人一人の悲しみの「記憶」は風化してしまうかもしれません。私は「記憶」の部分を伝えていきたいという思いを強くしています。