慶応大学名誉教授 小林 節
国民守るつもりはなく
いいなりに命とカネ肩代わり
7月29日、国分寺労政会館で開催した小金井国分寺支部9条の会「10周年記念講演会」での小林節慶応義塾大学名誉教授の講演、「憲法の危機」の大要を紹介します。
安倍首相はテレビ出演し、アメリカという母屋が火事の場合、わが国は憲法の規定で海外派兵できないので行けないが、日本の境界線に建っているアメリカのはなれが燃えたとき、安全なところで消火器を渡して何が悪いといっています。なぜ戦争を火事にたとえるのか、火事は消火器で消えますが、戦争では火の中から弾が飛んできます。
はなれの火を消しに行くことが限定的な集団的自衛権ということですが、ではどこへ行くかと問われ、機雷封鎖を解くためのホルムズ海峡しか考えていないといっている、アメリカの母屋の向こうです。機雷除去は相手が本気で戦闘行為をしているところを邪魔しに行くわけで、安倍首相は違うというが、戦争に参加することです。安全な時に機雷をどけて帰ってくるだけなら、それだけの法律を作ればよいのです。
武力行使の新3要件も変な話です。海の向こうでアメリカ軍が襲われた結果、明日にも日本国は沈没、日本国民の人権が全面的に否定される明確な危険があり、ほかの手段がない場合に限り、出て行き最小限の武力行使をするというが、手段はあります。アメリカに侵略戦争をやめて帰ってこいといえばよいのです。最小限の武力といっても戦火が拡大するのは明白です。
後方支援は通信、輸送、ハウジング、食事、修繕、治療などです。この法律では突撃する以外は何でもやれます。
イラクで突撃部隊送り迎え
憲法上の理由で海外派兵はできないし、海外でたたかっている外国の軍隊と一緒になると海外派兵と等しい武力行使をしたことになります。だから、イラクのサマワに陸上自衛隊を送ったときには「非戦闘地域」という概念をたてました。サマワで自衛隊は水補給をしましたが、滞在中に13回ロケット砲が飛び込んできて戦闘地域なりました。それでもアメリカに役に立たぬと国連の人と物資を支援する名目で航空自衛隊を出したものの、8割5分は米軍の突撃部隊の送迎をしました。これも憲法違反です。
あげくテロまきぞえ
今こそ安倍政権にトドメを
今度の法律では後方支援は戦闘地域・非戦闘地域を分けずに、現に戦闘が行なわれてないときに通信、食事、治療などをするといいます。さらに戦闘ではぐれた人を探して救出するという危険なこともアメリカのいいなりになってやります。弾が飛んでないときに行動するのは口実で、ウソをついてアメリカの戦争に参加しようとしているだけです。
アメリカは世界の警察といって勝手に世界中に火をつけています。戦争は角度を変えれば、超高額な花火大会です。アメリカは花火大会貧乏になり、困って日本に手伝えといっているのです。アメリカとつき合えばテロにあい、戦費破産となります。
自衛隊を海外に出せば日本はスカスカになり、日本を守ることができなくなる可能性もあります。本当に日本を守るのであれば、専守防衛をきっちり固めたほうが利口です。火事火事といっているアメリカこそが放火魔なのです。
いま、日本丸の船長とクルーが狂っているのだから取り換えなければいけません。安倍政権のあまりの理不尽さに選挙でケリをつける。主権者国民が権力を監視して、危ないと思えば取りかえる習慣をつければよい。総選挙で政権交代させれば、憲法がわれわれに根づいていく。そう思と楽しいではありませんか。