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○ マイナンバー制度は何を狙うのか

東京土建本部書記次長 徳森岳男

個人情報すべてを監視
国民の財布に手をつっこむ

 2015年4月23日にマイナンバー制度の施行前にもかかわらず、税と社会保障分野から利用を拡大(預貯金・健康情報)する改正案が衆議院に上程され、5月22日に衆議院を通過、現在参議院に送られています。さらには戸籍・自動車登録・大学奨学金情報についても政府の審議会で検討されています。
 しかし、年金番号流出等の事件が頻発し、国のセキュリティー管理に重大な疑念が生じ、明確な再発防止策が提示できない中で参議院の内閣委員会は採決の当面見送りを決めるなど先行きは不透明となっています。
 かりにマイナンバー改革法が成立すると、いくつもの問題が指摘されています。
 第一は、預金口座等に付番を求められるようになります。2018年から銀行等から個人番号をきかれるようになります(応えるかは任意)。2021年からは預金口座と個人番号の情報連携の義務化めざすとしています。

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預金口座の金額もあからさまに

IMAGE 第二は、預金口座との連動による懸念が広がります。入金先と出金先が常にあからさまになり売掛と買掛の突合が容易になるとともに、現金預金の増減が明らかになり所得変動の把握が容易になります。また現金の出し入れの把握もされることで現金決済扱いも捕捉される可能性があります。さらに家族同士の現金移動や遠方の口座も容易に監視されるため、贈与の非課税枠の厳守などにも注意が必要になります。預金口座との連動にはそのほかにもペイオフ対策と生活保護利用者と社会保険料未納者の資金力調査ももくろまれています。
 第三は、医療分野での活用拡大が懸念されます。予防接種やメタボ健診などの医療情報を扱えるように追加したうえで、その後さらに医療情報全般(治療内容、投薬状況)を加えて医療費削減につなげたい思惑も出されています。一方メリットとして個人カードを申請すると保険証として利用できることも検討課題になっています。医療保険一元化が保険証から手をつけられる可能性もあります。


付番に300億円も
コスト増に銀行業界および腰

 第四は、銀行業界はおよび腰です。銀行協会は預金口座への番号登録と国税庁への番号付きの情報の提供は事務・システム負担が大きいことから、提供内容や方法等につき金融機関との事前協議を行なったうえで十分な準備期間を設定することが必要としたうえで、既存口座への全数番号登録は課題がきわめて多く、金融機関に登録を義務づけることは非現実的(お客様が番号を申告する制度的なインセンティブ付与等の対応が必要)としています。
 また預金利子の支払通知書についてもお客様宛郵送は大幅なコスト負担となるだけでなく日本全国の既存預金口座10億口座の付番には6年以上が必要で、新規口座への付番だけでも銀行業界全体で300億円、システムコスト250億円、事務コスト50億円はかかるとの試算があり、すべての口座への付番作業は容易なことではないとしています。さらに日銀の資料によると個人預金口座には535兆円が積まれており、国の狙いは明白といえます。


「信頼しない」が75%
セキュリティー問題は深刻

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個人情報の流失を懸念する新聞報道

 第五は、セキュリティー問題が深刻です。日本年金機構がサイバー攻撃を受けおよそ125万件の個人情報が流出したとみられる問題で、およそ8割の人が政府の対応を「適切でない」と考えていることがJNNの世論調査でわかっています。また、国民1人1人に番号を割り振り社会保障や税などの情報をまとめて国が管理する「マイナンバー制度」の導入に「不安だ」と答えた人は73%で、国による個人情報の管理について、「信頼しない」と答えた人は75%でした。
 年金番号ですらセキュリティーを守ることができない現状にあっては、マイナンバーの流出やなり済まし利用を完全に防止する方法も保障もメドがたっていないのが現実です。あらゆる手続きで、番号記入が発生する以上、その番号を管理および閲覧する人の数は全国民におよび、漏えい防止は事実上不可能ともいわれています。最近では協会けんぽでも情報漏えいが推定され大きな問題になっています。
 第六は、自治体でもマイナンバー対応に追われています。自治体は住民票コードをもとにマイナンバーを住民に付番し、2015年10月から通知します。しかし、簡易書留で送られる通知カードがどれほど住民に届くか懸念され、膨大な数の未配達をどう処理するか頭を悩ませています。2016年1月からは、希望する住民に対してマイナンバー、顔写真等が印刷された「個人番号カード」を交付することになっています。
 しかし、受け取りには本人が直接窓口に行かなければ受け取れません。こうした対応のために既存システムの改修、新規システムの整備に膨大な人手と費用がかかっています。また制度を円滑に運用するための関係する条例整備を行なうとともに、これまでの業務や組織の大幅な見直しが必要となっています。人的にも資金的にも大きな負担となっています。
第七は、国民のプライバシーと財産権までも脅かす憲法違反の可能性があります。国民の健康状態や病歴・投薬情報・外来受診先から外国への渡航先、自動車の保有情報、奨学金の返済状況などなど特定の個人情報をすべて国が把握し、場合によっては刑事捜査や税務・国税調査に使えるようになります。
 これはまさに個人のプライバシーの侵害に当たり、預金口座の把握は国民の財産権にも影響を与えることになります。
公平の名のもとに国民の資産を把握しふくれ上がった政府債務の解消のために預金封鎖を容易にすることを懸念する意見もあります。(*憲法第29条「財産権は、これを侵してはならない」、憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される」)

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