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○ 安倍「医療改革」の問題点と影響

 安倍内閣が今国会で成立させた医療保険制度改革法案は国民健康保険(公営国保)を根本から変えてしまいます。医療の第一線に立つ4人の方に問題点と影響をききました。


無保険者広がる恐れ
保険料上げ在宅医療を強要

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今でも医療を受けたくとも受けられない人がいるのに…

 【医療法人社団健生会・岡崎いづみさんの話】国民健康保険が都道府県に移ることで、保険料は当然値上がりし、高い方に合わせられます。今も差し押さえがあり、保険証も送らずに役所に留め置きという自治体があり、手元に保険証が届いていない人が多いのです。当病院では無料低額診療制度で、医療費が払えない人の国保の3割自己負担を免除させ、医療を継続してくださいといっています。しかし、保険証を持っていない人はいったん10割払ってもらわねばなりません。全額病院で負担するのはきびしいので、保険証を持ってきてほしいとお願いしますが、国保料が払えなくて保険証をもっていない人が多く、無料低額診療でも救えない人がすごくふえています。都道府県化でこれがいっそう広がるのかと、とても気になります。
 もう一つ、地域医療計画を都道府県に持たせ、収入・収支の両方を都道府県の責任にして、保険料を上げたくなければ、支出になる医療費を抑えるという方向へしむけています。一番手っ取り早いのが急性期病院のベッドを減らし、入院しづらくして医療費を抑えるということを東京都に押しつけています。病院のシステムは医療法、看護師確保法などで決められており、病院の平均在院日数を割りだして、急性期病院は14日以内でないと認めないというしばりがあります。
 もう一つが在宅復帰率です。急性期病院から次の病院、次の病院と、なかなか家に帰れない方はお金がかかると在宅復帰率というのも最近もうけています。できるだけ一番安上がりな在宅医療に回そうとしています。これがますますきびしくなるであろうといわれています。
 平均在院日数14日ということは、一般的な患者は長くて1週間、3、4日の退院がとても多いです。2、3日で患者が入れ替わり、新たな患者の病状だとか、特徴だとか今までの病歴だとか、家族にどんな体制があって、退院した後どういう生活の場に帰っていただくことになるのか、介護する家族がいるのかということも頭に入れながら、退院調整を入院した時から始めます。そういうなかで看護師がたいへん疲弊しています。すべての病院がそれに合わせるのに振り回されている状態です。それがますますひどくなるだろうと思います。

高齢者の医療はさらにきびしく

 そもそも病院完結型から地域完結型へと入院ベッドの削減計画を昨年厚労省は打ち出しています。急性期病院を2年間で36万床から27万床へ9万床減らすという計画です。トータルで見ると2025年には202万床が必要といわれていますが、43万床を削減して、195万床にします。去年から今年にかけて、2年間で9万床削減の計画を出しましたが、現在減ったのは1万3千床です。去年4月の診療報酬のしばりでかなりきびしくなりましたが、まだ何とかしがみついています。
 しかし、お金がかかるから高度急性期はもっと減らしましょうと東京都がいって、それに応じない病院はレセプトをひっくり返し、急性期から慢性期に変えなさいという押しつけがやられようとしています。高齢者がふえると途中からお金が減ってしまうから受け入れないことがありましたが、それがますます深刻化するようになります。
 こんどの改悪は、患者をどうしたら救えるかというところから発想すると本当に恐ろしいことになると思います。


負担と安全性が問題
医療介護の枠見直しを

 【日本難病・疾病団体協議会水谷幸司事務局長の話】一番大きいのは患者の負担の問題と安全性がきちんと担保されるかの2点です。
 今回の法案は持続可能な医療制度のためといっていますが、その方策は患者負担に転嫁するようになっています。患者負担は現状でも限界です。保険料も上がりながら、受けるときは3割負担というのが受診抑制を生んでいます。
 医療は所得の低い人にも命を守るために必要であり、限界だと思っても患者は負担せざるを得ません。患者申出療養はその論理を逆手に取るようなもので、1%の可能性でもあればやってほしいと患者がいえば、医者はそれでやります。他の選択肢はなかったのかというようなことがなおざりにされていきます。
 患者申出療養で保険収載をめざすといっても何の担保もありません。患者に10割負担を求めるもので、重症化につながります。そもそも厚生労働省はホームページで混合診療に反対する理由をあげています。私たちはこの点に関して患者申出療養は担保できるのですかといっても、これから考えるという答弁です。
 難病のように長期の療養が必要になると、在宅療養をどう保障するかということが一番だいじです。在宅での安心をどう確保するか、医療機関の体制も含めた地域包括ケアが必要なのですが、今政府がいっていることは全然ちがっており、医療費を減らすための在宅になっています。
 2010年に私たちが行なった患者調査での所得状況は、約半分が200万円以下、300万円以下だと3分の2くらいで、正規職についていない人が多い。よい薬によって病状が安定し、正規職に就く人も出てきていますが、自己負担がものすごく高い。生物学的製剤は2カ月に1回投与で月平均3~5万円です。薬代だけで年間50万円くらいの負担です。患者負担は本当に重いです。
 今年1月、難病法成立により、地域で難病患者が尊厳を持って生きていくシステムをつくろうと厚労省は絵を描いていますが、今回の法案で総枠が決められ、その枠内でしかできません。難病法を根拠に医療・介護推進法の枠を見直すべきだという運動に変えていかないと、私たちも一緒につくってきた難病法がムダになってしまいます。


救急車まで一部有料化
公的保険制度を投げすてる

 【東京保険医協会・須田昭夫会長、細田悟理事の話】 須田会長 国保には退職者、長く病気をして中途退職してしまった人、職につけない人、高齢者、精神的疾患があって職につけないという人がたくさんいます。国の国保補助をどんどん減らし、財源を細らせて手放すというのは無責任です。国保というのはそもそも保険原理が成り立たないものです。それを独立採算でやれというのは公的保険制度の投げ捨てです。患者申出療養みたいな無責任な形で医療を行なわせるというのは、高度な医療は全部自前でやりなさいというものです。
医療の目的を金もうけだけにしてしまって、稼ぐ産業にしてしまおうというのがそもそものまちがいです。
 細田理事 今年5月財務省が救急車の一部有料化を出してきました。ようするに有料化して軽症者の利用を減らそうというものですが、現実的ではない。むしろ本当に必要な人が利用できなくなります。東京都の場合は救急指定病院が減っている。受け皿が減っていることが問題です。そこは診療報酬を上げるとか、都の助成金をふやすとか、救急医療がやりやすい環境を作ることがだいじです。地方財政の2兆円分の消防費を減らす、救急隊の人件費を減らせということですが、救急患者はふえているのです。
 須田会長 「持続可能な」とは嫌な言葉です。ようするに予算削減です。地域医療は、これから地域包括診療・地域包括医療・在宅療養とかでやっていくしかない環境ですが、それを支えようとたくさんの開業医が努力しています。診てきた患者を何とか支えようと、在宅医療を支えていますが長時間労働で疲労困ぱいです。今の地域で患者を支えるのはすでに限界です。これ以上、地域医療ということをいい続けると、本当に開業医の医療が崩壊していくのではないかと思います。
 東京の日の出町では老人医療と18歳までの医療も無料化しました。これにより町全体の医療費が減ってきています。手遅れにならないうちに病気になったら早め早めに医療機関を受診し治療をすることによって医療費を減らすことになります。受診しやすくして医療費がかからないようにしていくというのがこれからの方向です。

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