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[連載] 朝やけ


第2216号 2017年7月20日   NEW!

  • 小学生のころ、夏休みはどのように過ごしていただろう。思い返せば、宿題は後回しにして遊び呆ける毎日で、川遊びや昆虫採集など自然に触れることもできた。ときには親に山や海へ連れて行ってもらい、思い出に残ったこともある。
  • その夏休みの日数が授業日数の確保を理由に削られてきている。静岡県吉田町では来年度から小中学校の夏休みを10日間に短縮する方針が出された。狙いは授業日を増やして1日6時限の時間割を4〜5時限に短縮して教員の負担を減らし、負担を減らすことで質の高い教育を実現したいという。また一億総活躍社会にむけて、20~39歳の女性の子育てと教育にかかる苦労を緩和させ、社会参加を促進したいのだそうだ。しかしこれには子どもたちから、「サッカーなどの試合に出られなくなる」「キャンプや長期の旅行に行けない」などの不満が出ている。
  • 夏休みは子どもたちにとって自立心を養うよい機会でもある。長い休みの間、計画を立てて実行することはふだんでは経験できない。たとえ遊び呆けて計画通りにならなかったとしても、そこから学びとれることがある。どこの自治体でも授業日数が減ることでの学力低下を危惧するより、貴重な経験ができる夏休みを大切にしてほしい。

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第2214号 2017年7月1日

  • オオキンケイギクという初夏の時期に咲く花がある。鮮やかな黄色の花で一見キバナコスモスに似ているが、「特定外来生物被害防止法」で取り扱いが定められている特定外来生物だ。在来種を駆逐するほど繁殖力が強いため特定外来生物に指定された。群落をつくり、花が風に揺れる様はのどかだが、栽培は禁止されており、庭で見かけたら除草してほしいと市民に呼びかけている自治体もある。
  • 特定外来生物には環境に影響を与えるだけでなく、直接、人間に危害を加えるものがある。6月13日に環境省は、中国から神戸港経由で尼崎市に運ばれたコンテナの中でヒアリが発見されたと発表した。その後、神戸港でも見つかり、政府は全国125カ所の主要港湾を管轄する自治体に点検を要請した。ヒアリは毒性が強く、アレルギー反応を起こすと死亡することもあるという。1995年に大阪で発見されたセアカゴケグモは今や国内の各地で生息が確認されている。いずれヒアリも国内で繁殖するのだろうか。
  • TPPで輸入食品が急増したら、ヒアリなどの危険な特定外来生物が国内に入り込むリスクが高まるのではないか。政府はTPPを推進したいのであれば、安全だという根拠を示す必要があるだろう。

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第2213号 2017年6月20日

  • 小学生であった半世紀前、冬に学校では石炭を使ってだるまストーブが焚かれていた。焚きつけるコツがあったことなど懐かしく思い出されるが、この石炭の使用が地球温暖化の大きな課題となっている。
  • 石油、天然ガス、石炭といった化石燃料を使用する発電設備のうち石炭火力発電は最も多くの二酸化炭素を排出する。日本国内では今後も石炭火力発電所の新規建設を進めようとしている。日本の国際協力銀行がアジアを中心に石炭火力発電所建設への融資をしていることも問題だ。建設の環境基準がゆるく、インドネシアでは環境が悪化し、住民の生活や命まで脅かされ、今年3月には住民が来日し抗議している。
  • 米国のトランプ大統領が自国の石炭産業を守るためだと、パリ協定からの離脱を決めたことに批判の声が上がった。温暖化の主たる原因と言われる二酸化炭素の排出を抑えるためには、化石燃料によらない発電が必要になるし、省エネルギー化も求められてくる。トランプ大統領の考えは余りに身勝手と言わざるを得ないが、日本でも石炭火力発電所の建設が進んで行けばパリ協定の目標達成は不可能だろう。大企業の利益を優先するのではなく、化石燃料からの離脱をめざしていくことを真剣に模索するべきだろう。

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第2211号 2017年6月1日

  • 共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)が5月23日に衆院を通過した。共同通信社の世論調査では政府の説明が十分だと思わないとの回答が77.2%に達している。法案に賛成は39.9%、反対が41.1%でほぼ拮抗しているが、19日の衆院法務委員会での法案採択を「よくなかった」としたのが54.4%、今国会中に「成立させる必要ない」が56.1%で「成立させるべきだ」の31.0%を上回っている。
  • 世論を無視してまで成立させる必要がどこにあるのか。東京五輪のためテロ対策が必要というが、日本はすでに13本のテロ防止条約を結んでいるし、「国際組織犯罪防止条約」締結のためといっても、この条約はそもそもテロが対象になっていないことが国会論戦でも明らかになった。共謀罪で一般市民は対象外だというが、捜査対象を決めるのは警察だ。警察が組織的犯罪集団と認めれば一般市民にも捜査が及ぶ。
  • 刑法の法体系を大きく見直すものになることも明らかになった。社会的に実害が及ばなければ刑法犯とならないことが原則とされてきたが、共謀罪は重大犯罪でなくても実害のない段階で取り締まるもので、必然的に監視社会をもたらす。思想・信条の自由を侵し、心の中を裁こうとする共謀罪は廃案にするしかない。

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第2210号 2017年5月20日

  • 安倍首相は「公開憲法フォーラム」に送ったビデオメッセージで、「オリンピックが行なわれる2020年を日本の大きな節目として、憲法改正が行なわれる年にしたい」「9条に自衛隊を明文で書き込む」と憲法改正の日程と具体的な内容を明らかにした。
  • オリンピックの年としたのは1964年東京五輪を契機に経済発展したことを想起してのようだが、それまでに雇用不安、福島第一原発事故処理、震災復興などの課題にめどをつけるというのであろうか。憲法改正よりもやるべきことが山積みだし、国民がオリンピックに熱を上げているときに、自分の願望を通してしまおうとする根性が気に食わない。
  • 憲法9条に自衛隊を明記すれば、当然のことながら9条2項の戦力の不保持は骨抜きだ。これは許されないことだ。これまで日本は朝鮮戦争からイラク戦争にいたるまで参戦してこなかった。これは武力に依らない国際平和主義を貫こうとする日本国民の運動があったからに他ならない。世界で10位以内に入る戦力を保持する自衛隊の存在と集団的自衛権容認で憲法9条は傷だらけだが、決して改憲派の思惑通りに歴史は進まないだろう。戦争は悪だという認識のもと暴力の連鎖を断ち切るため、憲法9条を守り、広げていこう。

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第2208号 2017年5月1日

  • 1886年のアメリカで8時間労働制を要求して労働者が立ち上がった。これを記念し、1889年、第2インターナショナルは5月1日を労働者の団結とデモンストレーションの日と決め、1890年に第1回国際メーデーが開催された。8時間労働制の要求はこの時からメーデーで取り上げられてきた。
  • 今年のメーデーのスローガンでも「8時間働いたら帰る、暮らせるワークルールを」と掲げられた。120年以上にわたって、労使間でのせめぎ合いが続いている構図だ。この間には「機械化」「大量生産」「自動化」に代表される産業革命があり、仕事の省力化、危険作業からの解放などの前進面もあったが、同時に労働の過密化ももたらされた。速さと正確さを求められる労働が強制され、人間性が壊れていくことが日常となってしまった。
  • 政府は「第4次産業革命」として、生産性を上げるためにIoT、ビッグデータ、人工知能、ロボットを活用するとしている。確かに生産性は上がるかもしれないが、新たな失業者を生み、不安定雇用が今より広がる可能性がないとは言い切れない。8時間労働制をはじめとしたディーセントワーク実現のために必要なものは何か、私たちの側から問いかけ続けねばならないのだろう。

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第2207号 2017年4月20日

  • 3月20日、肥田舜太郎医師が亡くなった。広島に原爆が落とされた時、軍医として赴任しており、自ら被爆しながらも被爆者の治療に専念、医師を引退する2009年まで約6000人の被爆者を診療した。
  • 肥田医師は1955年の第1回原水爆禁止世界大会で放射能障害について報告し、75年からは海外で被爆医師として被爆の状況を語り、核兵器廃絶を訴え続けた。その頃、米国で低線量被曝の危険性に警鐘を鳴らしていたスターングラス博士と出会い、低線量被曝、内部被曝への理解を深めた。福島第1原発事故後、いち早く福島の子どもたちの集団疎開を進言して来た。
  • 3月27日からニューヨークの国連本部で始まった「核兵器禁止条約」制定交渉会議を前に、広島市内で被爆者団体が肥田医師の遺影を携えて、「ヒバクシャ国際署名」を集めながら、「条約」締結を訴えた。
  • 「条約」は核保有国や「核の傘」に依存する国々が参加しなかったため、締結への合意が進み、6月15日からの第2回の交渉会議で採択される見込みが出てきた。日本政府は「条約」に反対する演説を行ない、被爆者団体の失望を買った。肥田医師の冥福を祈りつつ、「条約」採択を力に、核保有国と非核保有国との橋渡しとなるように運動していきたい。

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第2205号 2017年4月1日

  • 「森友学園」の籠池理事長は、自分の思想信条を子どもに押し付けておいて何の反省もないが、これが、特定の考え方に基づく政治教育だとして大問題となった。
  • 2006年に改悪された教育基本法で、道徳心、公共心、愛国心など、心の内面まで指導するという教育目標が掲げられたことに、日本会議などは戦後教育を改革する手掛かりになったと絶賛した。しかし愛国心を押しつけようとする教育を進めた結果、園児に尖閣諸島、竹島、北方領土を守れ、中国、韓国は改心せよ、安倍首相がんばれと教えることになった。愛国心教育の目的がどこにあるのか図らずも世間に知らせる結果となった。
  • 問題とするのは当然なのだが、一方で、こうした「森友学園」の教育を批判することは「教育の自由」を侵すものだとする意見がある。しかし、憲法で保障されているのは「教育の自由」ではなく「教育を受ける権利」だ。教育の主体はこれを受ける子どもたちであって、決して学校や教師や親などではない。学校に教育する自由があり、教育内容を勝手に決めていいというものではない。子どもたちが生きたいように生きられる力を身に着けさせるのが本来の教育の役目であるし、その環境を整えることが私たちに求められている。

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第2204号 2017年3月20日

  • 「原発ゼロの未来へ、福島とともに3・4全国大集会」に参加した。福島県楢葉町に暮らす女性が「避難生活で友だちも生きがいもなくし死にたいと思っている人、菌と呼ばれたり無視されたりで引きこもりになった人がいる。故郷も家族もすべてが原発事故で奪われた。故郷、子どもの笑顔と団らんの場、生きがいを返してほしい、原発はもういらない」と訴えた。
  • 福島原発事故から6年が経過した。今でも福島県の内外で約8万人が避難生活を余儀なくされているが、この3月末、福島県は3万2000人の「自主避難者」への住宅無償提供を打ち切る。福島原発の事故処理費用は12年に試算した11兆円から21兆5000億円に膨れあがり、政府はその負担の一部を電気料金に上乗せしようとしている。安倍政権は原発再稼働、核燃料サイクル推進、原発輸出に躍起で何の反省もない。
  • 朝日新聞社と福島放送が実施した福島県民対象の世論調査で、福島県民であることで差別されていると感じるかは30%が「ある」と答えた。原発事故被災者への関心が薄れ、風化しつつあると思うかでは「風化しつつある」が74%。原発事故に対する政府対応には「評価しない」が60%で「評価する」21%の約3倍。政治の責任はどこへ行ったのだろう。

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第2202号 2017年3月1日

  • 国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は「タバコのない五輪」を推進している。WHOは日本の受動喫煙対策について、病院、学校、官公庁、一般の職場、レストラン、公共交通機関などで全面禁煙になっておらず、最低レベルと評価した。
  • 受動喫煙対策の推進と東京五輪を「おもてなし」の心で成功させるため、厚労省は今国会で飲食店を原則禁煙にする健康増進法改正案の提出をめざしている。これに対して、飲食・旅館関係の全国生活衛生同業組合中央会と全国たばこ販売協同組合連合会、全国たばこ耕作組合中央会、日本たばこ協会が全国で署名活動を展開。署名の趣旨は「受動喫煙防止対策の推進にあたっては、たばこを吸われる方・吸われない方および各事業者の多様性・自主性が尊重され、それぞれが『自由に選択できる』仕組みとなることを強く要望します」とある。
  • 日本たばこ産業株式会社は、厚労省が発表した受動喫煙の疾病リスクについて、科学的に説得力のある結論は出ていないと、もとより反対の立場だ。受動喫煙対策の強化で喫煙者が減っても構わないが、飲食・旅館業の客足が遠のくとの危機感にはきちんとした対応が必要だろう。東京五輪が終わってからのこともよく考えるべきだ。

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第2201号 2017年2月20日

  • 1月2日に東京MXが放送したニュース女子が批判されている。ニュース女子はDHCシアター(化粧品・健康食品販売大手DHCの子会社)が製作するニューストーク番組。2日の放送は「沖縄・高江のヘリパッド問題、今はどんな状況になっている?」と題し、軍事ジャーナリスト井上和彦の沖縄レポートを見て、スタジオトークするというもの。
  • 井上レポートは現地でまともに取材もせず、基地反対派の暴力で抗議行動の現場に近づけないとか、基地反対運動参加者には日当が払われているなど、あたかもヘリパッド建設反対運動が一部のテロリストまがいの活動家によるものと思わせる報告をしている。さらに反差別の活動をしているのりこえネット代表の辛淑玉が日当を出していると名指しで批判した。
  • 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は2月10日、同番組を審議入りすることを決定した。また辛淑玉は虚偽の内容だとBPOの放送人権委員会に人権侵害救済を申し立てており、「あの番組は差別を扇動するものであり、出てしまったデマを国として社会として訂正していかないといけない」と主張している。公共の電波を使ってデマを流し、国民の分断をはかることを許してはならない。

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第2199号 2017年2月1日

  • 2017年度予算案で防衛費は5年連続増加し5・1兆円となった。そのなかで軍事に転用可能な基礎研究の資金を助成する「安全保障技術研究推進制度」予算は、今年度の6億円から大幅に増額、概算要求通り110億円が認められたが、今年度の応募数は44件(大学等23件、公的研究機関11件、企業等10件)と、昨年度の応募数109件(大学等58件、公的研究機関22件、企業等29件)に対して激減している。
  • 研究費不足に苦しむ研究者が「安全保障技術研究推進制度」に手を出すのか。防衛省の狙いはこのような研究者たちだ。しかし秘密研究となる可能性が高い防衛省の資金に応募して武器開発の下請研究に従事することは、日本の軍事大国化に大学・研究機関の研究者たちが協力していくことだ。
  • これに危機感を抱いた研究者が「軍学共同反対連絡会」を昨年9月に立ち上げ、「安全保障技術研究推進制度」の廃止を求める緊急署名を呼びかけている。防衛省がいうデュアルユース技術の研究で民生技術への波及効果があるといった甘い言葉で惑わされてはならないだろう。最近、明治大学が全国紙に「軍事利用を目的とする研究・連携活動の禁止」の立場を表明した広告をだしたが、大学の姿勢も問われてくる。

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第2198号 2017年1月20日

  • 安倍首相は通常国会開会に向け、共謀罪の成立なくして五輪は開けないと発言、共謀罪の法整備を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を国会へ提出する考えだ。東京五輪・パラリンピックを安全に開催するために国際組織犯罪防止条約の批准が必要で、その要件に組織犯罪処罰法改正が不可欠だという。
  • 国際組織犯罪防止条約は国を越境しての組織犯罪を防ぐため、各国が協調していくための条約で重大犯罪の共謀や資金洗浄の取り締まりを義務付けている。しかし条約締結国すべてが共謀罪を定めているわけではなく、批准のために組織犯罪処罰法改正が必要かどうかは議論が分かれる。
  • 国際組織犯罪防止条約は国際テロ対策を目的としているとしているわけではない。外務省ではこの条約締結の背景として「交通や通信手段の高速化、金融、ITサービスその他のネットワークの広がりに伴い、急速に複雑化、深刻化している国際的な組織犯罪に効果的に対処するために」法整備などが必要となったと説明している。いわゆる経済的な組織犯罪が対象だ。
  • ひとたび共謀罪が成立すれば、適用の範囲などは容易に拡大するだろう。テロの名を借りて国民の恐怖心をあおり、労働組合や民主団体の弾圧に利用することは明らかだ。

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第2195号 2016年12月20日

  • 1920年代のピーク時に600万人の団員がいたといわれる米国の白人至上主義のKKK(クー・クラックス・クラン)は一時期2000人台まで落ち込んだが、最近人数を増やしているようだ。そこに拍車をかけたのがトランプ次期大統領の誕生だ。
  • KKKや白人ナショナリスト運動のオルト・ライトはトランプ氏を歓迎している。トランプ氏が米国人から雇用を奪う自由貿易協定の撤廃、メキシコ国境への壁建設、イスラム教徒の入国禁止などを公約したことが彼らを喜ばせた。ナチス式敬礼で祝った団体もあるほどだ。
  • トランプ氏は南部の白人低所得層に支持されたが、民主党支持とみられた人びとにも支持が広がった。生活を変えてほしいと願う人びとが、オバマ大統領の政策を引き継ぐクリントン氏ではなくトランプ氏を選んだのだった。
  • しかし選挙投票日からトランプ反対デモが空前の規模で起きた。トランプ氏の移民や女性への差別発言に敏感に反応し、危機感を持った人びとが立ち上がった。トランプ氏は米国に分断をもたらしたと評された。安倍首相は「信頼関係を築ける指導者」とコメントしたが、それほど持ち上げる理由は一体どこにあるのだろうか。

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第2193号 2016年12月1日

  • インドは独立した翌年の1948年、原子力法を制定、原子力開発に着手し、1973年、原子力発電の商用利用を始める。インドは当初、原子力の平和利用を掲げたが、中国の核兵器取得や核拡散防止条約(NPT)を理由に、1974年に核実験を実施。さらにパキスタンの核兵器取得、NPTの無期限延長、包括的核実験禁止条約(CTBT)に反発し、1998年、水爆実験を行ない、核兵器保有を宣言した。国連安保理は非難決議を出したが、米国はインドに接近、2007年、米印原子力協定が合意され、現在、インドは8カ国と原子力協定を結んでいる。
  • インドでは13億人をこえる国民のうち3億人に電気の供給がないなど電力事情が切実だ。安倍首相はそこへつけ入るように国内需要が減った原発輸出を狙って、日印原子力協定に署名した。NPTにもCTBTにも反対しているインドへの原子力技術協力は戦争被爆国のとる態度ではないし、脱原発を望む国民の声を無視したものでもある。
  • インドでも脱原発の住民運動が盛んで、核兵器開発に反対の声もあがっている。福島第1原発事故が収束しないのにインドに原発を売っている場合ではない。日印原子力協定を承認させないため、インドの人びとと連帯していきたい。

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第2192号 2016年11月20日

  • 全国の被爆者17万4080人の平均年齢が80・86歳になった。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)でも高齢化が進み、奈良、滋賀ではすでに団体が解散し、和歌山も解散間近だという。被爆体験の語り継ぎを被爆2世・3世に託す会もあらわれ、山梨県原水爆被爆者の会などでは会長を被爆2世が引き継いだ。
  • 被団協も訴えている「ヒバクシャ国際署名」は、被爆者が「生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」として取り組まれ、署名が国連総会第1委員会議長へ届けられるなか、第1委員会では「核兵器禁止条約」の交渉を来春から始める決議案を採択した。しかし、日本政府は決議案に反対した。理由に「条約」に実効性が期待できない、安全保障の考えがない、核拡散防止条約(NPT)に支障をきたすなどあげているが、軸足を核保有国に移すもので、被爆国がとる態度ではない。
  • 現在、世界には約1万5000発の核兵器があり、人類を絶滅させても核兵器が余る状態が続いている。生物兵器や化学兵器は禁止条約がすでにあるが、同じ大量破壊兵器でも核兵器は禁止条約が結ばれていない。核抑止論を捨て、核兵器と決別する時代を切り開くため、日本政府は被爆者の声を真摯に聞いてもらいたい。

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第2190号 2016年11月1日

  • 臨時国会でTPP協定批准をめぐる論戦が続いている。TPP協定は、参加国が2年以内に議会承認など国内手続きを終えないとき、GDPの合計が85%以上を占める6カ国以上が合意すれば発効する。参加国では米国と日本がGDPの8割近くを占め、両国とも批准しなければ発効しない。日本が批准しなければ、米国の結果を待つことなく、TPPは破棄される。
  • 米国では11月の大統領選を控え、民主、共和両党の候補者や議員がTPPに否定的な態度をとっている。オバマ政権は1月までの大統領選後の残った任期中に議会承認をめざしており、安倍首相はその後押しをすると今国会での承認に躍起になっている。
  • 2人の大統領候補が否定的な態度をとる背景には、米国最大の労働組合や環境団体がTPPに反対し民主党議員に働きかけていることや、北米自由貿易協定での雇用喪失の教訓などがある。しかし、どちらが大統領になっても、米国のグローバル企業の圧力を受けて再交渉となる可能性がある。再交渉となれば、日本に対して関税のさらなる引き下げや、保険・共済分野での規制緩和などの要求が突きつけられるだろう。日米グローバル企業の利潤追求のために主権を投げ出すTPP協定批准を許してはならない。

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第2189号 2016年10月20日

  • 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2015年度の運用が5兆3098億円の赤字となったことを7月29日に公表した。例年は7月上旬には発表している運用実績だが、莫大な赤字が参院選に影響することを考えたのか、選挙後に発表した。さらに8月26日にGPIFは16年4月?6月期の運用が5兆2342億円の赤字になったと発表、1年余で年金積立金が10兆円以上消えた。
  • 赤字の原因はGPIFの運用資産割合を、国内債券を60%から35%に引き下げ、国内株式と外国株式をそれぞれ12%から25%に増やしたことにある。安倍内閣はこれによって株価をつり上げ、景気回復したかのように見せかけ、アベノミクスの失敗を取り繕った。
  • 今国会では、年金の伸びを物価・賃金上昇以下に抑える「マクロ経済スライド」を強化する法案も審議される。年金の充実とは逆行する流れだ。さらに厚労省は、来年1月から私的年金である個人型確定拠出年金の加入対象をすべての現役世代に広げるとして、専業主婦にも加入を呼びかけている。アベノミクスのツケを国民に回すのではなく、年金積立金の安全な運用に徹し、年金の給付削減、自助努力の押しつけなどはやめるべきだろう。

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第2187号 2016年10月1日

  • 安倍首相を議長に未来投資会議が第1回会合を開催し、建設業の生産性向上をテーマに、情報通信技術(ICT)を取り入れた建機やドローンの導入を公共工事現場で開始していく方針を決めた。
  • 4月に国土交通省はi―Construction委員会の報告「建設現場の生産性革命」で、こうした土木工事での改革をトップランナー施策として推進し、生産性を上げるとしている。さらに、企業の経営環境を改善し現場労働者の賃金水準の向上と安定した休暇の取得、安全な現場の実現を目標に掲げている。そして建設現場に若年者や女性労働者を呼び込むという。計画どおりに大企業の現場で「生産性革命」は進むのかもしれないが、中小零細事業者の現場はどうなるのか。ICT建機自体が普及されていないとして導入促進のための経費支援なども提言しているが、中小零細事業者には容易ではないだろう。
  • 未来投資会議の方針は「建設現場の生産性革命」の提案を踏まえたもののようだが、まずは大企業が生産性を上げるための施策であり、成長戦略の柱となる人工知能やモノをつなぐインターネットといった先端技術を活用して、構造改革を進めるのが課題だ。中小零細事業者向けの対策などは二の次なのだろう。

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第2186号 2016年9月20日

  • 8月28日、NHK「バリバラ」は障害者が頑張る姿をメディアが取り上げ、視聴者の感動を誘うことに異議を唱えた。番組ではコメディアン兼ジャーナリストの故ステラ・ヤングさんが「障害は悪ではないし、障害者が立派な人とは限りません」「障害者が乗り越えるべき障害は体や病気ではなくて、私たち障害者を特別視しモノとして扱うこの社会なのです」と語ったことを紹介した。
  • 同時に放送していた日本テレビ「24時間テレビ愛は地球を救う」での障害者の取り上げ方を批判していると受け取った視聴者もいるだろうが、そうではない。「バリバラ」出演者で脳性マヒの玉木幸則さんは、「バリバラ」のホームページで「みんなが幸せになることをみんなで考えていくことが大事なことで、それをつき詰めていくと“人権を守る”であったり“差別をなくす”、そういうところに繋がっていくんちゃうかな」と発言している。
  • 障害者にとってバリアフリーな社会を目指さなければ、為政者の都合のよいように差別意識が助長し、人びとは分断・選別される。差別は障害者だけの問題ではないことに留意すべきだ。ステラさんや玉木さんの発言は、誰にとってもバリアフリーな社会を実現するための気づきと行動に繋がっていくだろう。

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第2184号 2016年9月1日

  • 第64回平和美術展を見てきた。絵画、写真、立体造形、書、生け花など、展示されている作品は多岐に渡り、海外からの出品もあった。作品に込められたテーマも様ざまで、絵画でいえば静物、人物、風景などから、沖縄の基地反対闘争、核兵器廃絶、福島原発など正面から取り上げた作品があった。平和を願う作品に共感しながら、平和だからこそ、作り手は自分の思い描くものを表現できるのだろうと思った。
  • 満州事変に始まる15年間の戦争において、多くの画家が軍部に協力し、従軍画家となって戦争画を描いた。画家としての地位を守るため、積極的に協力した場合もあれば、本意ではなくても拒めば非国民と呼ばれるなかで、協力した画家もいたことだろう。
  • 現在の日本で戦争に協力するような芸術を強制的に制作させられることはない。しかし、憲法が改正され国家が国民を縛ることになれば話は変わるだろう。自民党改憲草案では、表現の自由は「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行」なう場合は認められないことになる。何が公益及び公の秩序なのかは時の政府が判断するのだろうか。戦争反対、平和を守ろうという作品は発表の場がなくなり、国家の意思に従った芸術だけが陽の目を見るのかもしれない。

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第2183号 2016年8月20日

  • 小池都知事が立候補表明をしたとき、夕刊フジのインタビューのなかで横田基地の「軍民共用化」について問われ、「私には(軍民共用化への)秘策がある。今後の交渉次第だが、横田基地の活用は地域振興の観点からもポイントだ」と答えた。選挙期間中に福生市で行なった演説では「この地域の宝であります横田基地を、もっとみなさまに還元していきたい」と訴えた。
  • 都と基地の周辺自治体(5市1町)は「横田基地に関する東京都と周辺市町村連絡協議会」を1996年に発足させ、「横田基地の整理・縮小・返還」を求め、毎年政府に要望書を提出してきた。しかし、都は民間航空との共同使用計画を提案し、基地返還に向けた取り組みを避けてきた。この共同使用計画が「軍民共用化」だ。都は2014年の「東京都長期ビジョン」で、羽田・成田空港の機能を補完し、首都圏西部地域の航空利便性を向上させるとして軍民共用化を進めようとしている。都は騒音への配慮もするといっているが、横田基地周辺住民がどれだけひどい騒音に苦しめられているのか、想像がついていないとしか思えない。小池都知事誕生で横田基地返還への道が険しくなるのは必至だ。返還を求める住民運動との共同を強化し、危険な基地を撤去させたい。

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第2181号 2016年8月1日

  • 東京都は「オリンピック・パラリンピック教育」(オリパラ教育)を導入した。推進校として14年度に300校、15年度は600校を指定。16年度から全校で年間35時間のオリパラ教育の実施となり、さらに100校選ばれた重点校では(1)ボランティアマインドの醸成、(2)障害者理解の促進、(3)スポーツ志向の普及・拡大、(4)日本人としての自覚と誇りの涵養、(5)豊かな国際感覚の醸成の5項目のうちいずれかを取り組む。
  • 一定の価値観の押しつけである「自覚と誇り」や、上から押しつける「ボランティアマインド」でよいのか。教育現場では生徒全員に配布されたオリパラ教育の豪華な「学習読本」や新たな35時間の時間割に、オリパラなら何でもありかと疑問の声が上がっている。
  • オリンピック憲章で「オリンピズムの目標は、スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり、その目的は人間の尊厳保持に重きを置く平和な社会を推進することにある」とオリンピズムの意義を明らかにしている。そうであれば「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」日本国憲法を学ぶ方がよほどオリンピズムにかなっている。平和を希求するための「国際感覚」こそ必要なのではないか。

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第2180号 2016年7月20日

  • 福島県いわき市で開催された全建総連教宣大学に参加した。記念講演で地元の『日々の新聞』の大越章子さんが取材した人たちについて語ってくれた。
  • 祖母ととともに津波に遭って亡くなった小学校4年生の女の子。原発から30キロ圏内で、今も高濃度の放射能に汚染された地区に住み続ける女性。試験操業を続ける前漁協組合長。事故後も避難せず楢葉町に暮らし続ける女性など紹介してくれた。楢葉町の女性は「健康な体で長生きして、見届けないと。そして、だめなものはだめと言い続けないと」と語っていたそうだ。大越さんは「地域で起きていることは全国・世界につながっている」と話した。福島で起こっていることは他人事ではない。だから脱原発の運動も盛り上がりを見せている。地元の被害者(被災者ではない)の思いにふれることで運動への確信につながる。
  • 『日々の新聞』は日常の地域にあるものを詳しく、読者が知りたいものを一過性でなく伝えることを主眼としている。大越さんは記念講演の最後を「事故は収束していない。生活するには前を向くしかない。ヤジロベエのように行ったり来たりだけれど」と結んだ。震災や原発事故を風化させてはならない。記録し伝えていくことが大切なのだろう。

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第2178号 2016年7月1日

  • 取材で訪問した住宅デーの会場で、高齢の女性が相談をしていた。現在の住宅を壊して、土地を分割し、新築することは可能かということで、子どもたちへの相続が前提であるようだ。親と子が同居していた時代から子ども世代が別居していく時代へライフスタイルが変化しているといわれる。減築のメリットは、管理がしやすい、固定資産税や都市計画税の軽減、光熱費の軽減、隣家との間のオープンスペース化による延焼リスクの低減、住宅の耐震性能の向上などあげられる。生活費の節約と防災・減災にも効果がある。デメリットとしてモノを置くスペースが減ることがあげられるが、これは終活の準備ととらえて、思い切って不要なモノを始末すればよい。
  • しかし、減築をする高齢者がこれから容易に増えていくとは思えない。税・社会保険料などの負担増のもとで、年金以外に収入がない高齢世帯では無理であろう。別居を望む子ども世代にとっては低家賃の公営住宅が普及しない限り、家を出ることはかなわず、同居を余儀なくされる。そもそも生活するうえで金がかかりすぎる。
  • 退職したとたんに生活苦に見舞われてしまってよいのか。まじめに働いてきた人が老後もまともに暮せることを願って選挙で一票を投じたい。

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第2177号 2016年6月20日

  • 世田谷区立平和資料館で戦中に発行された「写真週報」を見た。「写真週報」は国策グラフ雑誌として内閣情報部が編集した。1部10銭で、1941年で約20万部、1942年では約30万部発行された。1冊の平均読者が10.6人といわれており、約200万から300万人に読まれていたことになる。
  • 「写真週報」の裏表紙に広告が掲載されている。1942年ころまでは、国民の健康維持が戦争遂行にも大切だと、ビタミン剤や疲労回復薬などがみえるが、戦況が悪化するにつれて、こうした広告は減り、戦費を賄うための国債や貯蓄の広告が圧倒的となる。
  • その一つに1942年から売り出された弾丸切手がある。1枚2円の割増金(くじ)付き戦時郵便貯金切手で、1等1000円300本といったくじがよく当たるということで、弾丸の名がついた。最近、熊本地震被災地支援でドリームジャンボ宝くじが売られたが、このくじ付き切手は、戦地に弾丸を送ろうというものだ。「ウレシイナ/ボクラノチョキンガ/タマニナル」というキャッチコピーもあった。戦中は、軍事費を調達するため、子どものフトコロまであてにした。同じ道をたどることがないとはいいきれない。軍事大国化は何としても止めなくてはならないだろう。

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第2175号 2016年6月1日

  • 自民党の改憲草案の第24条は「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」とある。助け合いとは道徳を盛り込むのかと自民党内でも批判が出た。
  • 小中学校では道徳の教科化が始まろうとしている。小学校では2018年度から、中学校ではその翌年度から、検定を受けた教科書も用意される。すでに、道徳に対する「関心・意欲・態度」について、授業中に挙手をするなど、外から見えることで評価するようになった。子どもたちは本心でなくても、評価されたい気持ちから挙手をする。自由な子どもの発想は抑えられてしまう。
  • 執拗に道徳の教科化をすすめる背景には、国家にとって都合のよい国民を育てたいとするもくろみが見え隠れしている。官製の「公正」「正義」の押しつけは、「戦争ができる国づくり」のための国民を育てることになるのではないだろうか。改憲草案の第3条は「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とある。思想・信条の自由を侵害し、ひとつの考え方しか認めようとしない。道徳の教科化は憲法改正とセットになって、国家が個人より上に立つ世の中をつくっていくのだろう。

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第2174号 2016年5月20日

  • 雑誌「世界」5月号で、チェルノブイリ原発があるウクライナ共和国の隣国のベラルーシに、事故後の1991年から医療支援に赴いた菅谷昭(すげのやあきら・現長野県松本市長・医師)さんがインタビューに答えている。菅谷さんによれば、2012年にベラルーシを訪れたさい、年間被爆量が1ミリシーベルト前後の地域でも、子どもたちに免疫機能の低下や貧血などの症状が出ていたという。これらの症状が放射線被爆と関係があるのか、はっきりとしないとしながらも、慢性的な低線量被爆が健康に及ぼす影響に注意が必要と指摘している。
  • ウクライナやベラルーシの子どもと同じように福島の子どもたちは最善の利益が侵害されている。「子どもの権利条約」違反が国によって引き起こされている。福島の子どもたちの健康不安やいわれのない差別を払拭するため、子どもたちへのサポートが必要だ。低線量被爆を避け、友人・家族の絆を取り戻すことを目的として、市民団体によって子どもたちの移住や疎開、留学、短期間のキャンプ体験などの事業が取り組まれている。しかし、本来は国が責任を持つべき事業である。国は被災者の意見を入れず、強制的な帰還を進めるのではなく、「子どもの権利条約」を原点に支援をすべきだ。

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第2172号 2016年5月1日

  • 甚大な被害をもたらした熊本地震。九州大学地震火山観測研究センターによれば、別府から雲仙に至る別府―島原地溝帯に沿う地域は、地震活動が活発な場所であったという。しかし3カ所の断層帯で連続的に地震が続いたのは想定外であったようだ。南海トラフや阿蘇山噴火との関連はどうなのか。川内原発は運転中止が当然だろう。
  • 首都圏では直下型地震対策が求められている。かつて、革新都政では、地震は自然現象であるが、地震による災害の多くは人災であるとして、英知と技術と努力で、地震による災害を未然に防止し、被害を最小限にくい止めることができるはずだとした。しかし、石原都政になり、「自らの生命は自らが守る」という自己責任原則の「自助」と、地域での助け合いで「自分のまちは自分で守る」という「共助」の考え方を住民に押し付け、行政の責任を後景に押しやってしまった。
  • 東京都防災会議は、東京が首都であり、中枢機能を担っていることを被害想定の前提条件としている。都民の生命よりも首都機能の維持が優先された。私たちは行政と災害時協定を結び、共助として防災・減災に努めているが、公助の役割を軽視しているわけではない。大規模災害時に行政は何をすべきか、ともに考えていきたい。

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第2171号 2016年4月20日

  • 選挙権年齢が満20歳から満18歳に引き下げられ、高校生の政治活動が肯定された。かつて、大学紛争の影響を重大視した当時の文部省は、1969年の初等中等教育局長通知で高校生の政治活動に規制を加えた。規制の理由として、未成年者に参政権が与えられていないことなどから「国家・社会としては未成年者が政治的活動を行なうことを期待していないし、むしろ行なわないよう要請している」ことなどあげている。今回の選挙権年齢引き下げは、こうした考えに180度の転換を迫っているといえるのだが、どうも文部科学省はそのように考えていないようだ。
  • 昨年10月、都道府県教育委員会などへの通知で「家庭の理解の下、生徒が判断し、行うもの」として校外の政治活動だけは認めたが、今年1月には校外活動の届け出制を言い出した。愛媛県では県立全59高が2016年度から校則を改定し、生徒が校外で政治活動や選挙運動をする場合に届けることを求めるという。これでは政治活動への参加が萎縮してしまう。
  • 政治参加のための主権者教育でも課題がある。子どもが自分なりの意見表明をすることを保障しなければならないし、なによりも現実の政治問題に距離をおいてきた学校教育を見直さなければならないだろう。

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第2169号 2016年4月1日

  • 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発被害訴訟で、3月18日、福島地裁の裁判官が帰還困難区域に指定されている浪江、富岡、双葉各町の原告の住宅などを現地検証した。福島原発事故に関わる裁判で裁判官が現地検証に入ったのは初めてのことだ。
  • この訴訟は憲法13条の個人の尊重の規定を根源に、放射性物質によって汚染されていない環境で生活する権利の侵害に対して、国と東京電力に原発事故以前の原状への回復と損害賠償を求めている。安倍政権は昨年6月、福島復興加速化指針を改定、帰還困難区域を除く地域の避難指示を2017年3月までに解除し、当該の地域への慰謝料や賠償支払いも収束させる考えだ。避難指示の解除については年間20ミリシーベルトを基準にするが、この基準は国際放射線防護委員会で緊急時被爆状況の下限とされたもので、健康被害がないという保証はない。原告の健康不安が解消されるわけではない。
  • 安倍首相は東京オリンピック招致のため、福島原発は管理下においていると発言したが、保管された80万トンにおよぶ汚染水の最終処分方法もめどが立っていない。原発事故の被害を矮小化し、原発輸出に拍車をかける安倍政権に対し、福島を切り捨てるなと声を上げていきたい。

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第2168号 2016年3月20日

  • 安倍首相は在任中に明文改憲を行ないたいと発言。夏の参議院選挙で改憲を争点にしたくないと与党内からの批判をうけ、憲法9条改正には国民の理解がまだできていないとトーンダウンする一面もあったが、集団的自衛権の行使について「国際法上持っている権利は行使できるという考え方のもとに、われわれは憲法改正草案をお示ししている」と、改憲で集団的自衛権の無制限な行使を目指す考えを隠していない。
  • 具体的に明文改憲として導入しようとしているのが、自民党改憲草案にもある「緊急事態条項」の新設だ。総理大臣が「緊急事態」を宣言すると総理大臣に権力が集中し、法律と同等の政令を出して国民の基本的人権を制約することができる。自民党改憲草案には「外部からの武力攻撃」「大規模な自然災害」とならんで「内乱等による社会秩序の混乱」を「緊急事態」としてあげている。
  • 「緊急事態条項」を新設するねらいは安保法制では実現できなかった国民に対する権利制限や自治体の統制をすすめることなのだろう。この条項は、憲法に拘束されない全権限をナチスに与えた「全権委任法」と似ていて非常に危険だと指摘されている。現在の憲法下の立憲主義に真っ向から挑戦するものであり、許されるものではない。

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第2166号 2016年3月1日

  • 高市早苗総務大臣は衆院予算委員会で政治的公平性を欠く放送を繰り返す放送局に対しては、放送法に違反するので電波停止もありうると発言した。
  • 1950年、GHQの示唆で電波と放送を国家の管理からはずす目的で電波管理委員会が設置されたが、サンフランシスコ講和条約を結んだ吉田内閣は2年後に廃止した。最近では2009年に与党であった民主党が総務省から通信・放送行政を切り離し、通信・放送委員会設置を方針化したが実現できなかった。
  • 高市発言は放送局への権力の介入を許さず、自律性を持たせようとした電波管理委員会などの考え方の対極にある。放送局は放送免許制度があるため、電波停止といわれると萎縮せざるをえない。しかし放送法第1条は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」とうたっている。これに実効性をもたせるためには、放送免許制度の見直しが求められる。政治権力の不当な介入に対し、放送局が堂堂とたたかうためにそうした条件整備も必要だ。政治的公平性とはいかなる政治勢力も放送に介入してはならないということだ。高市発言に対抗するためには、国民のために表現の自由を行使する放送の役割を理解しなければならない。

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第2165号 2016年2月20日

  • 定時制高校に通う生徒が自らの体験を発表する「全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会」が毎年開催されている。一昨年の「大会」で、複雑な家庭環境のため精神が不安定となった生徒が、級友や先生の応援もあって、生活を立て直せたと発表し、最後に「生きていて本当によかった」と語ったという。
  • 昨年11月、東京都教育委員会は「都立高校改革推進計画・新実施計画(案)」を発表。立川、小山台、雪谷、江北の4つの夜間定時制高校を廃校(閉課程)とするとし、2月12日に決定した。かつて100校以上あった夜間定時制高校は2003年以降廃校が続き、39校まで減らされたなかでのことだ。今回の計画には多数の反対の声が上がったが、住民が要求した地元説明会は開催されなかった。
  • 夜間定時制高校は勤労青少年以外に、帰国子女、在日外国人、高校卒業を希望する成人、不登校やハンディキャップがある生徒など、多様な生徒を受け入れてきた。立川高校では昨年の2次募集で倍率は1.31倍だ。需要はある。廃校によって選択できる学校が限定され、通学時間や通学費の負担が増せば、入学を断念するものも出てくる。夜間定時制高校は事情を抱える子どもたちのセーフティネットだ。弱者を切り捨てる教育行政は許されない。

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第2163号 2016年2月1日

  • 一人親家庭の生活を支えるための児童扶養手当には所得制限が設けられているが、2002年の「改正」から、養育費を受けとっている場合はその8割を収入認定し、手当減額の措置がとられている。1月14日、全国青年司法書士協議会は、これでは一人親家庭の貧困対策にはならないとして、養育費の収入認定をやめるよう、政府・国会・各政党へ意見書を提出した。母子世帯の母の就労形態は非正規労働が52.1%を占め、離婚母子世帯の平均就労年収は176万円(全国母子世帯等調査)。貧困対策は待ったなしの課題だ。
  • 一人親家庭の貧困は子どもの貧困に直結する。こうした家庭を支援しようと全国で「子ども食堂」の取り組みがすすんでいる。経済的に苦しく食事をとれない子どもや、親の就労のため一人で食事をとる子どもに、無料または低価格で食事を提供する食堂だ。ボランティアやNPO法人で実施している地域がほとんどだが、北九州市のように自治体として開設する動きも出てきた。「子ども食堂」には食事の提供以外に学習支援を行なうところもあり、放課後の子どもの居場所づくりにもなっている。地域社会は子どもの貧困に目を向けている。行政を巻き込んで貧困の連鎖を断ち切るきっかけとなることを期待したい。

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第2162号 2016年1月20日

  • 1月6日の北朝鮮による「水爆」実験後、「核戦争の危険から国の自主権と民族の生存権を守る自衛的措置だ」と金正恩第1書記は発言した。
  • 他国では水爆ではなかったとする見方が強い。米国によるビキニ環礁の水爆実験は15メガトンの爆発力で、ヒロシマ・ナガサキの原爆の1000倍の破壊力だ。水爆は原爆の爆発を引き金とするため、原爆開発をした国々では引き続いて水爆実験を行なったが、技術の完成をみると中止をしてきた。北朝鮮の「水爆」は「ブースト型核分裂爆弾(強化原爆)」と見られているが、北朝鮮は核実験に成功し、強力な核兵器を保持したことを内外に宣伝したかったことは間違いない。これは世界の核兵器廃絶運動に水を差し、包括的核実験禁止条約の発効への障害にしかならない。北朝鮮の核実験は「核戦争の危険」を高めるものでしかない。
  • アジア情勢も緊張が一層高まる。被爆国日本としては外交的な努力で北朝鮮に核を放棄させていく諸外国の先頭に立つことが求められているが、国内では北朝鮮に対抗しようというナショナリズムが高揚し、集団的自衛権はやはり必要だとする論拠とされていくことになるのではないか。お互いに「自衛」といっている状況が何をもたらすのか考えていくべきであろう。

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第2159号 2015年12月20日

  • 内閣府の「少子化社会対策白書」では、子育てへの不安として、全体として「経済的にやっていけるか」が63.9%と最も多く、次いで「仕事をしながら子育てすることがむずかしそう」(51.1%)という調査結果を紹介している。
  • また子どもを持ちたいという意欲を阻害する要因として、女性の「イライラ」をあげ、「イライラ」が高まる原因に「夫の気が張りつめている」ことがあるという。女性がこれを感じる割合は夫の帰宅時間が22時を超えると急激に高まるようだ。また夫の帰宅時間が21時を過ぎる状況が、子どもを育てる生活の質を損なっている可能性を指摘している。長時間労働が蔓延するもと、家族ともつ時間など生活全般の検討が必要だ。
  • 安倍首相は「新3本の矢」で一億総活躍社会をめざしている。「矢」のひとつに「夢をつむぐ子育て支援」がある。出生率を現在の1.4から1.8まで回復させるとして、子育てにかかる経済的負担の軽減にむけ、幼児教育の無償化や結婚支援・不妊治療支援にも取り組むという。しかし、政府は生涯派遣に道を開いた労働者派遣法の改悪など、子育ての道を閉ざし、結婚もできない労働者をふやす政策をとりつづけている。これでは「夢」などつむげない。見直すべきは逆立ちした政策だろう。

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第2157号 2015年12月1日

  • ユネスコ世界記憶遺産に日本が申請した「シベリア抑留・引き揚げ」の記録が登録された。一方では中国が申請した「南京大虐殺」の記録も登録され、日本国内ではこれに反発する人人が、中国によるユネスコの政治利用と非難し、日本政府はユネスコ分担金の支払い停止の考えがあると表明する事態となった。そのやさき、ロシアが日本のシベリア抑留の記録に対して、政治利用だと異議をとなえた。
  • また中国は登録が却下された「従軍慰安婦関連」の記録を慰安婦被害者が多い韓国などと共同で申請しようと動きだしたが、これに対して日本政府は世界記憶遺産の審査に影響力を持つユネスコのアジア太平洋地域委員会に、日本人委員の派遣を決めた。審査過程での発言力を強める方針という。こうした事態にユネスコ本部のイリナ・ボコバ事務局長は世界記憶遺産登録の審査過程に「透明性が欠如している」ことを認め、制度改革の検討を表明した。
  • 政治利用の応酬が続くのは互いの歴史認識の違いのためだ。ユネスコへの圧力や影響力を強化するのではなく対話が必要だ。「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と宣言したユネスコ憲章にそった解決が望まれる。

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第2156号 2015年11月20日

  • 先日、調布支部の教宣学習会に参加し、四谷の消防博物館に行った。江戸時代から現代までの消防の変遷の紹介に力を入れており、江戸時代の龍吐水(りゅうどすい)と最新の放水銃との比較など興味深い。龍吐水は手押しポンプで放水する装置で10~15メートル先まで水が届く。放水のようすが、龍が水を吐いているようだ(たぶん、だれも本物は見ていないと思うが)として、龍吐水と名づけられた。さらに防火用水、天水桶、穴倉など火事への備えをとおして、自助・共助の重要性も訴えている。
  • 東日本大震災で公の機関も被災し、必要な救援活動もできなかった反省から、自助・共助の重要性が見直されたが、あらたに、地域コミュニティの弱体化が問題となっている。住民の日ごろのつながりが絶たれるなかで、孤独死や児童虐待が放置されたなど、悲劇がくりかえされている。独居老人や障害者がどこに住んでいるのかを自治体は把握をしていても、防犯上、他人に教えられない場合がほとんどだ。これでは住民が共助の必要性を理解していても、災害時に人を助けることはできない。
  • この秋、組合では住宅デーが取り組まれている。減災・防災もテーマだ。来場者の笑顔をみるたびに、地域コミュニティの再構築がせまられていると思う。

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第2154号 2015年11月1日

  • ペルーの世界遺産・マチュピチュは外国人にも人気が高い観光地だ。その景観から「空中都市」とも称される。「日本のマチュピチュ」と呼ばれているのが兵庫県朝来市(あさごし)の竹田城だ。2006年に「日本100名城」に選ばれたころから来訪者がふえ、さらに高倉健主演映画「あなたへ」やNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」のロケ地になり、人気に拍車がかかった。2005年度で年間1万2000人であった来訪者が、2013年度からは50万人を超えている。
  • 竹田城では保存のための整備が必要になり、2013年から入場料を徴収。本家・マチュピチュでも遺跡保存のため入場料があるが、近隣の「アンデス共同体」(自由貿易圏)構成国以外の外国人は、ペルー国民とくらべて2倍の金額だ。
  • 10月に「大筋合意」したTPPでは観光地の入場料は対象ではないが、ペルー政府はTPP参加国からの観光客には、マチュピチュなどの入場料を自国民と同程度の金額としたいと表明した。観光客は喜んでいるようだが、TPPが前提では素直に歓迎できない。
  • TPPはペルーでは議会で与党が少数政党のため成立は容易でなく、米国やカナダでも議会や選挙で争点になっており、交渉参加国の国民の反対の声は根強いものがある。

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第2153号 2015年10月20日

  • 防犯カメラの設置数は全国で500万台を超えるといわれている(2014年NHKクローズアップ現代)。最近の防犯カメラは4K対応など解像度も上がり、360度旋回型、逆行補正など性能向上が著しい。防犯カメラの映像をテレビでみるたびに、私たちは見張られていると思う。これに通信の傍受も加われば、立派な監視社会というほかはない。
  • 安全保障関連法案の成立の陰で、成立はしなかったが「盗聴法(通信傍受法)」の改悪がもくろまれていた。検察や警察が捜査のために電話などから傍受できる対象を、薬物、銃器、組織的殺人、集団密航の組織犯罪から、窃盗、詐欺、傷害など一般市民も対象となりうる内容に広げ、傍受にあたっては通信事業者の立会いも不要というものだ。一般市民を対象に、盗聴を合法的に、しかも立会いがないため記録されることもない。
  • マイナンバー制度では収集した個人情報を破壊活動防止法、少年法などにもとづく調査・捜査目的での提供を認めている。個人情報が犯罪抑止の名目で国家の監視のもとに置かれる。2020年東京オリンピックでは生体情報の登録によるテロ対策も検討されている。生体情報は究極の個人情報だろう。人権無視の監視社会の到来を招いてはならない。

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第2151号 2015年10月1日

  • 「じぶんの國のことばかりを考え、じぶんの國のためばかりを考えて、ほかの國の立場を考えないでは、世界中の國が、なかよくしてゆくことはできません。世界中の國が、いくさをしないで、なかよくやってゆくことを、國際平和主義といいます」
  • 1947年8月に当時の文部省が発行した「あたらしい憲法のはなし」の一節だ。さらに「この國際平和主義をわすれて、じぶんの國のことばかり考えていたので、とうとう戰爭をはじめてしまったのです」とある。集団的自衛権行使を容認する人たちが批判する一国平和主義とは全く違う世界平和の理念がある。そもそも、憲法には何もしないで平和がくるとか一国平和主義で行くのだなどの考えはない。安全保障関連法は軍事同盟の強化に他ならず、「國際平和主義」からの逆コースになるだろう。軍事力に頼る「積極的平和主義」も必要ない。
  • 「みなさん、國会の議事堂をごぞんじですか。あの白いうつくしい建物に、日の光りがさしているのをごらんなさい。あれは日本國民の力をあらわすところです。主権をもっている日本國民が國を治めてゆくところです」(「あたらしい憲法のはなし」)。良識ある国民は、国民主権無視の安全保障関連法強行採決を永く記憶にとどめるだろう。

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第2150号 2015年9月20日

  • 8月30日に放映されたNHKスペシャル「老人漂流社会『親子共倒れを防げ』」は、悲惨な「老後破産」を浮き彫りにした。働き盛りの世代が失業をきっかけに老親と同居するが、親の少ない年金を頼りにするしかなく、同居によってかえって負担がふえ、生活困難に陥る。働ける家族が同居することで生活保護が打ち切られる。母親の介護のために仕事を辞めて同居した息子が突然死し、体が不自由だった母親が数日後凍死したという最悪のケースも紹介された。
  • 親と同居する35歳から44歳の未婚の子どもは、1980年には39万人であったが、2012年で305万人に増加。そのうち10.4%が失業している。
  • 今国会で成立した「改正」労働者派遣法は派遣を固定化するものでしかないことが、野党の追及で明らかになった。企業は人件費を削るために派遣労働者を雇っているのが現状だ。国は派遣労働者の産休・育休取得の状況すら調査しないで「改正」するという。誰のための派遣法「改正」なのか。同居による「老後破産」の原因のひとつには働く世代の賃金が減り続けていることがある。「親子とも倒れ」にいたるような派遣労働は人をモノ扱いするものだ。まともに生活するために必要なものは何かという想像力が欠けている。

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第2148号 2015年9月1日

  • 「天災は忘れたころ来る」とは戦前の物理学者・寺田寅彦の言葉だ。この言葉は戦中に朝日新聞で1日1訓というものを編集したとき、9月1日の分として採用された。もっとも、寺田寅彦の随筆にはこの言葉は見当たらず、似たことが書かれていると、弟子の中谷宇吉郎がしるしている。
  • 関東大震災以降に地震研究の重要性が強調され、これまでの研究成果を引き継ぎ、1925年、東京帝国大学内に地震研究所を設置、寺田寅彦も所員として活動した。
  • 東大地震研究所出身の石橋克彦神戸大学名誉教授は、東日本大震災直後に開かれた参議院行政監視委員会の参考人として、福島第一原発が大津波以前に地震の揺れで重大事故が発生した可能性があると指摘。先月11日、再稼動した川内原発をめぐっては、5月に開かれた日本地球惑星科学連合大会で、「原子力規制委員会は、火山や地震の影響を過小評価している」と石橋克彦教授をはじめとする専門家が批判した。
  • 九州電力は川内原発2号機も続いて稼動させ、2基で月間150億円の収支改善をめざす。住民の安全をないがしろにし、原発再稼動で儲けを優先する原子力ムラと、その要望にこたえる政府には、寺田寅彦の言葉も1世紀にわたる地震研究の成果も届いていない。

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第2147号 2015年8月20日

  • 戦後70年間、日本は戦争していない。日米安保条約に基づいて米軍基地が国内に置かれ、ベトナム戦争で日本の基地から米軍が攻撃に出ても、日本は反撃されることがなかった。それは1960年、参議院予算委員会で岸信介首相が集団的自衛権は「憲法上は、日本は持っていない」と答弁したように、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとの解釈が確立していたため、自衛隊が参戦しなかったからだ。
  • 韓国は集団的自衛権の行使としてベトナム戦争に参戦したが、韓国の参戦は朝鮮戦争でアメリカが韓国側で戦ってくれたことの恩返しという「大義名分」と、韓国の経済発展、韓米関係強化、韓国軍の戦闘能力向上という「実利」があったためという。その結果、韓国では約5000人が戦死、約1万人が負傷し、ベトナム民間人に対する虐殺行為が告発された。
  • 国連憲章上では個別的自衛権は武力攻撃を受けた国が、必要かつ相当な限度で防衛のため武力に訴える権利とある。武力攻撃の予測すらつかない時点で、武力行使をする集団的自衛権を何のために認めるのか。アメリカの戦争に加担することでなく、憲法9条のもと、平和外交に徹することで日本がこれからも戦後であり続けることが私たちの大義名分と実利だろう。

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第2145号 2015年8月1日

  • 8月に安倍首相が出す戦後70年「安倍談話」をめぐり、米国のラッセル国務次官補は「第二次大戦に関し、これまでと同様に日本政府や日本の人人が感じてきた反省の思いを代弁してほしい」と要望した。国内では74人の国際政治学者らが1931~45年の戦争を「国際法上、違法な侵略戦争だった」と指摘、侵略や植民地支配への反省を示した「村山談話」や「小泉談話」の継承を求めた。
  • 安倍首相は2つの談話を「全体として継承する」という一方、「植民地支配と侵略」や「痛切な反省と心からのお詫び」などの表現をそのまま盛り込むことは拒み、未来志向の内容にするという。
  • 6月に行なわれた村山元首相と河野元官房長官の対談で、村山元首相は「村山談話」は謝ることが目的で出したわけではなく、「平和憲法を持っている日本の国が、戦争はしないんだ、平和で生きるんだということを国で宣言する、そのためには、過去の歴史というものをしっかり反省したうえで、再び過ちは繰り返さないという決意」でこれから生きることを証明するために出したといっている。
  • 安倍首相のいう未来志向とはどこへ向かうことなのか。戦争法案と両立するような「安倍談話」では平和を希求する諸国民の納得は得られないだろう。

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第2144号 2015年7月20日

  • 「円安で喜ぶ大企業、国民はつらいだけ♪今もだめな自民党、安倍内閣♪」…制服向上委員会による「おじいさんの時計」の替え歌の一節だ。このような歌詞が問題だとして、神奈川県大和市は、市民団体「憲法9条やまとの会」が6月に開催したイベントの後援名義を事後になって取り消した。市のいい分は、「諸悪の根源自民党」などの歌詞が、後援条件の「要領」のなかで「特定の政党」の「活動に関係するもの」にあたり、後援できないとしている。
  • こうした自治体後援拒否の事例が近年ふえている。毎日新聞の調査では「憲法」「平和・戦争」「原発」「特定秘密保護法」の4つをテーマとするイベントについて2010~14年度に後援申請を断った件数が5年間で倍増したという。
  • 後援拒否にとどまらず、公共施設での慰安婦のパネル展示拒否や公民館月報への9条俳句掲載拒否などの事態も起きている。
  • 後援などを拒否する理由として、国論が分かれている問題で中立性を保つためという自治体がある。政権党であれば国民からの批判があって当然だ。市民の多様な意見・考えを発表する場を保障し、後援することで市民活動を促進することが自治体本来の役割ではないか。市民が口をつぐむ社会を招いてはならない。

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第2142号 2015年7月1日

  • 東京都教育委員会による教科書展示会が開かれている。2016年度に使用する小・中・高の教科書見本だが、中学生用は採択替えの年度にあたる。
  • 子どもと教科書全国ネット21は教科書展示会に先立ちアピールを発表。育鵬社と自由社の歴史教科書は、日本が行った侵略戦争と植民地支配を美化していると指摘、育鵬社公民教科書は集団的自衛権行使を容認し、日米安保体制のもと軍事力で国を守る必要性を強調していると批判し、教育委員会や学校設置者が理性的に判断して教科書を採択するよう呼びかけた。
  • 昨年1月の教科書検定基準改定で「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」と一部改正された。「政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例」とはさまざま意見があるなかの一つの見解で、これが唯一正しいものであるとはいえない。改正に従えば政府見解や最高裁判例の結論が絶対であると子どもに教え込むことになる。子どもは多様な意見に接し、多面的にものごとをとらえ、判断力を養うことが必要だ。子どもの学習権を保障していくため、教師の意見を尊重すべきだ。教科書が政府広報誌であってはならない。

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第2141号 2015年6月20日

  • 沖縄が琉球と呼ばれたころ、琉球は薩摩藩の支配があったものの、中国の清朝とは朝貢関係にあり、中国・朝鮮など周辺諸国と貿易を行なう海洋王国であった。薩摩藩が年貢の増額を要求しても巧みな外交交渉で譲歩を引き出すなど、王国の存亡をかけて大国に立ち向かった。しかし、明治期の「琉球処分」により琉球藩が強権的に設置され、廃藩置県で沖縄県が生まれる。
  • 太平洋戦争後、沖縄はサンフランシスコ講和条約で日本の独立と引き換えに日本から分離される。1972年、日本に「復帰」したとき、多くの県民が平和憲法に期待をもっただろうが、その後も基地は強化され、基地被害が絶えることはなかった。
  • 沖縄が戦後70年目の「慰霊の日」を迎えようとしているとき、翁長雄志・沖縄県知事は辺野古新基地建設をめぐって「自ら土地を奪い、県民に大変な苦しみを今日まで与えておいて、『普天間基地が老朽化したから、世界一危険になったから、お前たちが負担しろ。辺野古が唯一の解決策だ』という話がされている。私は、日本の安全保障や日米同盟を考える上で、日本国の政治の堕落ではないかと申し上げている」と批判している。沖縄の未来は県民が決めるという自己決定権のもつ意義は重たい。

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第2139号 2015年6月1日

  • アメリカ国防総省は、米軍横田基地に2017年からオスプレイを配備すると決めた。
  • 米軍横田基地は、敗戦後、旧日本陸軍多摩飛行場を米軍が接収し、朝鮮戦争以後、拡張され現在に至っている。福生市をはじめとした周辺5市1町にまたがり、沖縄県を除くと国内で最大の米空軍基地だ。総面積約7136平方キロメートル、東京ドームの約157倍の広さをもつ。福生市では、行政面積の32.4%にあたる3317平方キロメートルを提供している。
  • 米軍横田基地は、1974年、府中空軍施設から在日米軍司令部と第5空軍司令部が移転、司令部機能をもった。2012年には自衛隊航空総隊司令部・作戦情報隊・防空指揮群・気象及び警務関連部隊の公式運用が始まる。現在の横田基地は航空自衛隊航空総隊司令部と在日米軍の第5空軍司令部とが置かれたことで、日米共同統合運用調整所が設けられ、日米共同使用の最重要施設となった。
  • オスプレイ配備に対して、羽村市議会では5月19日の臨時議会で配備を憂慮する決議を全会一致で可決したという。当然の反応であろう。設計上の欠陥も指摘されるオスプレイの米軍横田基地への配備は、本州の広い範囲が危険な訓練場になることも忘れてはならない。決して周辺自治体だけの問題ではない。

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第2138号 2015年5月20日

  • 平和行進出発式に参加した。会場は1954年にビキニ環礁でアメリカの水爆実験で被ばくした第5福竜丸展示館の前である。
  • 第5福竜丸が被ばくした3月1日の水爆実験は広島型原爆の1000倍の規模といわれ、第5福竜丸だけでなく1000隻におよぶ船舶が死の灰を浴び、2万人近くが被ばくした。同年9月23日、第5福竜丸無線長の久保山愛吉さんが亡くなり、その後も乗組員の半数の12人がガンなどで亡くなった。「原水爆による被害者は、私を最後にして欲しい」という久保山さんの最後の言葉は悲痛だ。
  • 1954年の秋、東宝の特撮映画「ゴジラ」が上映された。ゴジラは度重なる水爆実験で眠りからさめ、日本にやって来て破壊の限りを尽くす。しかしゴジラは科学者が開発したオキシジェンデストロイヤーという兵器で殺される。本多猪四郎監督は、「真正面から戦争、核兵器の恐ろしさ、愚かさを訴える」と語ったという。ゴジラは核の申し子であると同時に核をコントロールしようという人間に対し自分の命を懸けて「ちがうのではないか」と問いかけている。福島の原発災害に対して、一向に反省の色を見せない政府を抱えた国民として、ヒロシマ、ナガサキ、ビキニ、フクシマの経験から学ぶことはこれからも続くだろう。

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第2136号 2015年5月1日

  • 今年も憲法記念日を迎える。
  • 小林節慶応大学名誉教授はデモ隊のスローガンは「憲法を守ろう、9条を守ろう」ではなく「政府に守らせよう」であろうと発言している。憲法は国家が誤作動しないように枠を与えるもの、権力を縛るのが憲法の役目という。
  • 私たちは集会・デモで「守ろう」と訴えてきた。基本的人権・国民主権・平和主義に照らしてこの国がどこへ向かってすすむのか危惧してきた。長時間労働、低賃金で後継者が育たない建設現場が放置されていて憲法が守られているといえるか、身近な問題にも直結している。憲法改正でくらしがどうなるのか、人権や主権がないがしろにされ、現状の酷い状況が固定化されるような国家の誤作動はごめんこうむりたい。
  • 連休後に衆議院憲法審査会が審議を再開する。自民党は自然災害時の国会議員の任期延長など緊急事態条項新設を先行させたいと主張、民主党は首相の解散権、選挙の低投票率、道州制の問題もあるといっている。安倍首相や自民党は来年の参議院選挙後に改憲発議しようと改正スケジュール先行だ。そもそも憲法改正のための審査会を開くこと自体、問題視するむきもあろう。憲法の理念をいっそう開花させるため声を出していきたい。

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第2135号 2015年4月20日

  • 1月は始まりの月だが、4月は出発(たびだち)の月である。新入学、新クラス、会社、事業所への新入。とりわけ、小学校新入学姿は、名もしらぬ子でもほほえんで、声をかけたくなるほど愛らしい。
  • 出発(たびだち)は若者だけのものではない。養子に入った家を再興し、資産をなした伊能忠敬は「人生50年の時代」に49歳で隠居の身になると、江戸に出て天文学などを学ぶ生活を始めた。そして55歳で日本測量に旅立ち、蝦夷地(北海道)から屋久島まで歩き、73歳で死を迎えるまで日本地図作製に励んだ。
  • 若ければ何もしなくても、出発の機会は次つぎにくる。しかし、年を取ると伊能忠敬のように決意なしには新たな出発などできない。東京土建も新年度を迎えた。新たに組合役員を引き受けた仲間たちは「喜び勇んで」なった人ばかりではあるまい。しかし、東京土建の役員は大変だが、それをはるかに上回る知と人が得られる新たな出発の機会である。
  • ありがたいもので、「朝やけ」を読んだ仲間から、励ましや、ねぎらい、さらに「もう一回だけ書いて」の惜別の言葉までいただいた。温かな言葉に感謝し、場は違うけれど「新たな出発(たびだち)」の一歩を踏み出す決意を仲間とともにしたい。

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第2133号 2015年4月1日

  • 実ははじめから決めていた。最後の回に幼なじみの長谷川くんのことを書き、カーテンコールの時に、仲間のみなさんに夢の話でお別れしようと。
  • 5年ほど前、「15歳の時の夢はいまどうなっていますか」というテーマで原稿をつのった。女子アナ志望だったが経済的な事情で進学を断念。今は住宅デーのアナウンスでがんばっているという仲間がいて、生きていくことの大変さをあらためて思った。
  • 「朝やけ」子の最初の夢は映画監督になって、岩下志麻のような美女たちに君臨することだった。この10年、東京土建の1年の運動を振り返るDVDのプロデューサーをしているから、わずかながら夢をかなえたといえようか。
  • 考えてみれば、建設職人が旦那衆や役人よりはるか下の存在だとされていた時代に、果たしている役割にふさわしい評価・地位が得られる社会を夢見て大工、石工たちが結成したのが東京土建だ。建設労働者解放という夢の大きさが、仲間を奮いたたせ、日本最大の建設労組に発展させたのだと思う。
  • 「将来はこんな社会、産業に」と仲間たちから夢を託され、実現していく組合であり続けることを願って、お別れのあいさつとします。長らくのご愛読ありがとうございました。

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